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>>02

放課後に絵本を借りに来るあの女生徒のことをいつまでも「その人」や「あの人」と呼ぶのはいささか失礼だと思ったので、あの人の外見をチョイスして、「(チョコ)コロネの人」と呼ぶことにしたんだけど、これもあまりしっくりこなかった。

わたしが、図書当番をしているのは放課後の週四回。委員会での当番、役割決めのジャンケンで見事に負けてしまい、副委員長で放課後週四回の図書当番という大はずれを引いてしまった。たしかあの日の朝の占いは一位だったはずなのにな、ともう朝の占いを信じられなくなった日でもあった。

でも、別に本は嫌いじゃないし、自分が読んだ本を借りる人を見ると胸が弾んだり、図書当番の週四も別に苦でもない。でも、ただ一人で図書当番するということが少し寂しいだけ。放課後、図書室は毎日五時に閉まる。そのときに、一人で図書室内すべての窓を閉め、軽く図書室内を掃除して、陽も傾いて薄暗い図書室を出て鍵を閉めて帰るというそこだけが少し寂しくていやだった。

「返却おねがいしますー。」

いつも、なんでこんなに明るいのか、図書室内なんだから少しは小声で言えないとかという明るい元気な声で本を返しにきたその人。いや、コロネの人は今日もいつもどおりの「シンデレラ」を返しに来ては、また図書室閉鎖の時間まで絵本の棚から本を取って、読んでいる。

わたしも、図書当番としてもなにもすることがないので、図書室にある文庫本を手に取り読むけど、はずれたみたいであまりおもしろくない本だった。
退屈に思い、なんとなく図書室内を見渡すと、あのコロネの人が目に涙をためていた。
え…、と驚き、自分から離れたところで本を読んでいるコロネの人に目をこらすと、どうやら本を読んで感動しているようだった。本といっても、絵本。
頑張ってもっと目をこらしてみると、絵本の表紙がかすかに見えた。アヒル。あー…確かなんとかになれないアヒルの子だったっけ。もう絵本なんて目も通さない年齢になり、昔よく読んだ絵本の内容ももう全くと言って覚えてない。

泣いてはないけど、小さい頃わたしもあの本を見て嫌な気持ちになったことがあった。なんでいじめるの。かわいそう。っていう。
そんなことを思い出して、コロネの人を見ているとなんだか彼女はただの変人なんかではなくて純粋な人なんだな、なんて思った。




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