薔薇の花園に君を連れていく | ナノ


▼ 洋館について

「ねえ、赤司くん。この洋館って赤司くんの家とどれくらい似ているの?」
「全然似ていないよ。建物は全くの別物だと思っていい。ただ、ソファーやベッドは家にあるものに近いな。」
「へぇ、ここのベッドふかふかで気持ちいいよね。いつもあんなお布団で寝られるなんていいなぁ。」
「そうかな。俺は家族で敷布団を敷いて、クーラーの無い暑い夜を過ごしてみたいな。」
「赤司くん変わってるね。」
「よく言われるよ。」
「じゃああの庭園は?とっても美しい庭園。あれも実際にあるの?」
「いや、あんな庭家にはないし、見た事も無いよ。」
「ならあれは赤司くんの想像なんだね。私、あの庭園を見て、この人がこんなに美しい庭園を造ったのかぁって感心したんだよ。まるで天使の住処みたいって思った。」
「俺もあそこは気に入っているんだ。名前が来る前はしょっちゅう庭園を眺めていた。」
「心が洗われるよね。とっても綺麗で、私が現実に戻ったらもう見られなくなっちゃうのがちょっと寂しいくらい。」
「そうだね。現実でも似たような庭園が無いか、帰ったら探してみようか。」
「うん、私も探そう。それにしても、ベッドやソファーみたいな家具とか小物類が実在するものだとしたら、この薔薇モチーフのナイフや砂時計、ガラスケースなんかも赤司くんの所有物なの?」
「いや、これも知らない。」
「ふーん。砂時計も綺麗だと思ったけれど、このガラスケースの薔薇も凄く綺麗だよね。この薔薇って元々白かったんでしょ?」
「ああ。」
「それが最近色付き始めたんだよね。」
「ああ、だいたい1、2週間前くらいだったと思う。」
「それって私が来た頃くらい?」
「そうだったかもしれないね。」
「へぇ、へぇ。」
「…何を考えている。」
「うふふ。綺麗な薔薇だなぁー。」
「あまりじろじろ見ないでくれ。」
「あ、色が少し濃くなった!」
「っ、おい」
「うっそ〜。」
「…。出ていけ馬鹿。」
「あっ、痛い!ふふ、ごめんって!」

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