薔薇の花園に君を連れていく | ナノ


▼ 大切なもの

「赤司くんにとって大切なものって何?」
「大切、か。なんだろうね。今までは勝利が全てだったけれど、敗北を知ってからはそれよりも大切なものがあると分かったし。…それを教えてくれた友人、というのはどうだろう。」
「クサい!が、赤司くんが言うと様になる不思議。」
「クサかったか。ふふ、確かにそうかもしれない。」
「あぁ、そうやって照れる赤司くんも含めて赤司くんだ。文句の付けどころがない。なんなんだいったい。不条理だ。」
「ん、今日は少し攻撃的じゃないか。」
「なんか悔しくなってきたんだよ。一緒にいると赤司くんは格好いいし、友達だって結局中高にはいるし、すっごく仲良しみたいだし、お金持ちだし。苦労しているのは知っているけど、今ある物だけを比べて嫉妬するような小さい人間なんです私は。ええ小さいですよ私は。」
「ふふ、今日の名前はなんだか可愛いね。」
「か…!可愛くない!その余裕がまた…もういいや。話を戻して、大切なものについてだったね。私の大切なものは何だろう。あ、でもきっと、この世界で過ごした時間も、現実に帰れば大切な思い出になるのかもしれない。」
「思い出か。確かに思い出も大切だね。」
「赤司くんと過ごした思い出、大切にするよ、私。」
「…そうか。」
「赤司くんも、少しだけでもいいから私のこと覚えていてね。」
「さて、どうしようか。」
「あっ酷い!」
「あいにく俺は人望が厚いんだ。次から次へと人が寄ってきて、全員覚えるわけにはいかない。けれど、そうだな…名前が何か印象に残るようなことをしてくれれば、覚えていられるかもしれない。」
「くっ…そうきたか。いいだろう。見るがいい私の必殺技!ザ・なまけものの真似!」
「…。」
「…。」
「っぷ、〜〜っ!!」
「やったあ!見たか私の奥義を!」
「…っ、ふ…っ!」
「…。」
「ふふ、…、」
「…あのさ、ちょっと笑い過ぎじゃない?」
「す、すまない…、あまりにも…」
「…赤司くん?」
「いや…、悪かった。もう大丈夫だ。はぁ、久しぶりに人間以外のモノを見た気がする。」
「も、もういいよ。私そろそろ帰るからね。」
「もう帰るのか?」
「うん。怒っているとかじゃなくて、普通にそろそろ戻るよ。またね赤司くん。」
「ん、ああ、また。」
「(はぁ、今日の私の扱いは散々だったな。なんでこんな事になったんだっけ。)」
「俺も、名前の事はずっと忘れられそうにないな。っふふ、」

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