薔薇の花園に君を連れていく | ナノ


▼ 楽しかったこと

「赤司くんは楽しかったことって何かある?」
「漠然とし過ぎじゃないか。」
「そうだよね。私が楽しかったことってなんだろう。家族で行った温泉旅行とか、あと友達と遊園地に行ったこととか?」
「温泉に遊園地か。名前の毎日は充実していそうだね。」
「えへへ。赤司くんは家族や友人とどこか行った思い出はある?」
「うちは父が厳しい人だから、あまり旅行に行ったりはしないんだ。」
「お母さんは?」
「母は既に他界している。」
「あ…、ご、ごめんね。えっと、じゃあ友達とは?遊園地とか、旅行とか。」
「ないよ。恥ずかしい話、遊園地に行ったことすらないんだ。」
「へぇ、珍しい。赤司くんてモテそうなのに案外寂しい人間なんだね。」
「名前には遠慮というものがないのか。」
「いてて!ごめんね。でも大丈夫。そんな寂しい赤司くんには私が連れて行ってあげようではないか。」
「それはありがたき幸せ。」
「おお、ノリが良いね。よきに計らえ〜。」
「あ、そういえば中学と高校の時に修学旅行があったな。一番楽しかったことはそれかもしれない。」
「修学旅行!楽しいよね。夜皆で雑魚寝して、修学旅行トークをした思い出があるよ。楽しかったなー。」
「女子は修学旅行トークというのをするのか。男子は枕投げだったよ。それで皆疲れていつの間にか寝てしまうんだ。俺は後処理が大変だった。」
「赤司くんは面倒見がいいね。ふふ、枕投げも楽しそう。」
「ああ。でも修学旅行トークというのにも興味があるな。」
「今度しようか。雑魚寝で修学旅行トーク。きっと楽しいよ。」
「ああ。期待しておく。」
「うん。それじゃあ、今日の質問はこの辺にしておこうかな。どうもありがとう。」
「ああ。…、」
「赤司くん?」
「いや。…今も結構楽しいな、と思って。」
「!」
「それだけ。じゃあ。」
「あっ…!(赤司くん…。行っちゃった。)」

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