※以下、ひよ丼様からリクエストをさせて頂きました話になります。
無断掲載等はお止め下さい。
本家様>>ひよこの巣





























[吹雪一家]


「兄ちゃん、あっち行こうぜ!」

「まってよ、アツヤ!」


あっちこっちへ走り回るアツヤと、追い掛けるボク


「こら、2人とも
あんまり遠くに行っちゃダメよ」

「せっかく来たんだ、ゆっくり回ろう」


そして後ろには、ボク達の父さんと母さんが優しくほほえんでいる

ボクとアツヤは、母さんに「わかってるー」と大きく返事をして、駆け出した

父さんには悪いけど、ゆっくりなんかしてられない!

だって今日は、北海道から遠く離れた京都に来ているんだから!




−京都初体験!−



知らない街、聞き慣れない言葉

ここはボクの知らない物があふれている


「兄ちゃん、これ食う?」


適当に入ったお土産物屋さんで、アツヤが持ってきたのは、なんだかよくわからないけど粉をまぶしてあるやわらかそうなもの


「ナマヤツハシって言うんだって
うまいぞ!」


すでにアツヤは食べたようで、しきりにボクに勧めてくるから、「じゃあ…」と食べてみた

それは、中にあんこが入っていて、やわらかくって、あまくって、とにかくすごくおいしい

ボクはおいしい、と呟いてからアツヤを見て言った


「もっといっぱい、食べたいね」

「おう、いっぱいな!」


ボク達は顔を見合せ、笑いあって、駆け出した



「父さーん!」

「母さん!」


元来た道を走って戻れば、2人並んでゆっくり歩いてる両親がいて、ボク達は2人を呼びながらとびついた

そして、ばっと顔をあげて


「「ナマヤツハシ、買って!」」


なんて、2人で声を合わせておねだり

父さんと母さんはちょっと驚いてから、困ったように笑った

この顔はおもちゃ屋さんでおねだりしたときに、いつも母さん達がする顔で
買うつもりないから、どうやってボク達を宥めるかって考えてるんだ

じゃあ、ダメかな
がっかりして、でも諦めきれなくて
アツヤなんて、もう泣きそうだ


と思ったら、母さんと父さんがしゃがんで、やさしく笑いながらボク達の目の前に出したレジ袋


「これは、なんでしょう?」


その中には、四角い箱が入っていた

透けて見えたパッケージには『生八ツ橋』って文字が書いてある

ボクはまだ漢字が読めなくて、これがなんだかわからなくて、
アツヤと相談しよう
そう思って隣を見たら、アツヤはすごくうれしそうに目を輝かせて、


「兄ちゃん、これ!ナマヤツハシ!」


そう言った


「………ナマヤツハシ?」

「ナマヤツハシ!」

「ほんとに?」

「オレ、売り場のおばちゃんに教えてもらったもん!」


自信満々に言って、父さんに「そうだよな!?」って確認して

父さんはやさしく笑ってアツヤの頭をなでた



「あとでみんなで旅館で食べようね」


そう言った母さんは、ボクの頭をなでてくれた

さっきの困った顔は、もう買ってしまったからだったのか、って気が付いて

アツヤと2人、うれしくてもう一度母さんと父さんに抱きついた




それから、またボクはアツヤを追いかけるようにしてお土産物屋さんを巡ったり、父さん達にご飯を食べたり、甘味処に行ったり

旅館では、温泉に入って、泳ごうとするアツヤを止めて、湯上がりの牛乳を飲んで、夕飯を食べて


待ちに待った、八ツ橋を食べた


二度目の八ツ橋は、やっぱり甘くってやわらかくって、おいしかった

「帰りにまた買ってもらおうね」ってアツヤと話して、それからボクは覚えていない

どうやら話しながら寝ちゃったようだった
アツヤも同じだったみたい


それからもう一度温泉に入って、身仕度して、父さんが言うには、今日はお寺巡りをするらしい


京都は北海道と違って雪がないし、建物古いし

だけど、とってもおいしいところ

また来たいな、家族みんなで