※百合





甘い香りが立ち込める今日のアジト、キッチンは名前が占領してる。サソリーナ姐さんは部屋でゆっくりしててください、なんて可愛いエプロンつけて言うモンだから、アタシも言われるがまま期待してるってワケ。全く名前ったら可愛いわよねぇん。



「っ…ふぇ、っぐすっずびっ」

「……」



数時間後あたしの部屋に来た名前は鼻を真っ赤にして涙を流していた。皿に置かれたシフォンケーキは真っ黒で、ぷすぷすと煙をあげている。


「ごめんなさいっ…シフォンケーキ、こんな、焦がしっ…」

「あーあーあーあー…泣き虫ねぇん名前ったら…ほら」

「んぐ」


ハンカチを顔に押し付けてやって、改めてシフォンケーキに向き合う。このシフォンケーキ、カボチャ味であたしがリクエストしたもの。普段からお菓子を作る名前はその腕も大したもので、前はシフォンケーキもちゃんと奇麗に焼けていた。…名前のことだから途中居眠りでもしたのねぇん、きっと。


「ごめんなさいっ…よりによって、シフォンケーキ、」

「いいわよぉん、ほら、他にもプリンも作ってくれてるじゃない、クッキーもタルトも奇麗にできてるし!!あたし名前の作ったお菓子好きなのよぉ」

「姐さんっ…!!」


むぎゅ、と抱きついてくる名前の頭を撫でてやり、カボチャプリンを一口食べる。美味しい。甘さ控えめなのね、だけど生クリームも丁寧に添えてあるし、しっとりしてて正直そこいらのケーキ屋より好みにできてる。


「どうですか…?」

「美味しいに決まってんでしょぉ!」


ぱあっと笑顔になった名前は、あたしの隣に座ってタルトを食べ始めた。

あぁ、今年のハロウィンも幸せだわ…




あなたとあなたの作ったお菓子が食べられて!
(あっ、名前生クリーム零したわよぉん)
(えっ、どこですか?)
(ここよ(べろ)
(ひあうっ!!)
(…おんしら菓子を使ってセックスする気か?どうでもいいが部屋でやれ)
(えっちがっ!)


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