少しだけでも許されない
【導入】
あなたは1週間前に友人である岡悠人と会う約束をした。なんでも相談したいことがあるのだという。しかし、当日待ち合わせ場所の喫茶店に岡は現れず、連絡も取れない。不審に思ったあなたは、1ヶ月ほど前に引っ越したという岡の新居へ向かうことにした。

岡の新居は、最寄り駅から徒歩5分ほどの場所にある5階建のマンションで、築年数は20数年といったところ。部屋は5階らしい。岡の部屋の前にやってきたところで、隣室から出てきたおばさんに話しかけられる。

「あら?そこの男の子に用かしら?」
「いないかもしれないわよ。一昨日の夜にふらっと出て行くのを見たし…7時くらいかしらね?帰ってきた気配はないと思うけれど」
「それに…その部屋ちょっと訳ありだから、あなたも変なことに巻き込まれるかもしれないし帰った方がいいわよ」

○訳あり内容
・格安の家賃(2万3千円)なのは、怪奇現象が起きたり、行方不明者が出たりしているから
・5年前に住んでいたお嬢さんが行方不明になって以降こうなっている
・たいていの人は怪奇現象に耐えられなくなってすぐに出て行く
・お嬢さんの名前は確か「鳥羽聖」
・お寺だか神社だかの娘さんだったような?
・途中から彼氏らしき金髪の男が出入りしていた

色々話し終えるとおばさんは去って行く。
岡の部屋のインターホンを鳴らしても反応なし。玄関の鍵は開いていて容易に入ることができる。
入ると玄関からまずダイニングキッチンとなり、右手側に風呂場・トイレに繋がるドア、奥に六畳ほどのリビングがあり、リビングからは少し狭目のベランダへ行けるようだ。リビングの右手側にはもう一部屋続いているらしく、寝室となっている。
まだ開けられていない段ボールが数個見られるものの、室内にはきちんと生活感がある。


【ダイニングキッチン】
冷蔵庫や食器棚、テーブル、イスなどがあるいたって普通のダイニングキッチン。

・〈目星〉に成功
→ テーブルの上に、携帯、家の鍵、財布が置いてあるのに気づく

・携帯を見る
→ 中には友人の覚書的なメモが残されている。メモの保存された日付は引っ越して来てからのものだ。日記としての役割もあったのだろう。

『○月×日
引っ越し完了! 家賃格安でやばいボロ部屋かと思ってたけどやっぱり綺麗な家だよな。三部屋もあるし。
○月□日
ここ最近はずっと荷解き作業してる。終わるのか…?
○月△日
なんだか部屋に違和感がある。荷解きもほぼ終わったし、部屋のレイアウトの問題かな…。いずれ慣れるだろ。
○月◇日
変だ。視線を感じる。誰かいるのか? いや、いるわけがない。振り返っても誰もいない。きっと引っ越し終わって疲れてるんだ。
○月●日
気のせいなんかじゃない。見られてる。それだけじゃない。声がする。俺を呼んでる…。
どこだ…どこからなんだ…。誰が見てんだよ。俺になにしろってんだ…。
○月■日
やっぱりこの部屋はやばかったんだ。俺だけじゃなかった。くそ…。
○月▲日
見つけた』


【リビング】
ローテーブルに座椅子、テレビが置かれている。部屋の隅にはパソコンラックがあり、ノートパソコンや印刷機が置かれている。カーテンは閉められており、カーテンレールに物干しハンガー(ピンチハンガー)がかけられていることから、ベランダは使っていなかったのだろうと察せられる。

・〈目星〉に成功
→ リビングから隣の寝室へ繋がる扉の近くに何かが落ちている。見ると金槌と小型のバールのようなものだった。

・パソコンを見る
→ スリープ状態だったようでキーボードかマウスをいじると起動する。どこかのサイトを見ている途中だったようだ。画面には2ちゃんのまとめサイトがあり、1つのスレが映し出されている。スレ名は【借りた部屋が】誰かに見られてる【おかしい】

・スレについて
→ スレが立てられたのは今から約3年前。内容は引っ越して来たマンションの一室で不思議な現象が起きているというスレ主が、原因を解明しようというもの。現象とは、誰もいないのに視線を感じる、呼ばれている気がするというもので、原因を見つけなければならないと思ったらしい。視線の主を探すようにスレには度々室内写真があげられており、その室内は今いる友人の部屋とそっくりだった。スレ主は最後「見つけた」という一言とともに、どこかを写した酷くブレた写真があげたきり失踪。釣りスレとされた。

・スレに〈目星〉〈アイデア〉
→ 関連スレのなかに、同時期に立てられていたスレがいくつか並べられている。そのなかのひとつに目が止まる。【陰謀の】ホームレスが減ってる【気配?】参照。 → 【ハンドアウト】へ飛ぶ。


【寝室】
パイプベッドやゲームカセットやラノベの並んだ本棚、カラーボックスがある。脱ぎっぱなしの靴下などがベッド付近に落ちている。部屋に足を踏み入れた瞬間、探索者はなんとも言い難い気配を感じる。いや、これは視線だろうか…? この部屋になにかいるかもしれない、そんな恐怖を覚えた探索者はSANC 0/1。

SANCに失敗した探索者は〈聞き耳〉を行う。成功すると、自分を呼ぶような声がした気がする。

・〈目星〉に成功
→ 部屋に入って右手の壁に本棚が置かれているが、その後ろにポスターのようなものが見えている。変に思い近づくと、本棚を動かしたような跡が。

・本棚を動かす
→ 大きめのポスターが壁に貼られている。ポスターからはみ出すように、壁の亀裂が見えている。

・ポスターを剥がす
→ 逆立った髪に見開かれた目、つり上がった眉、燃えるような赤い肌をした憤怒の形相の面をした女性が壁に埋め込まれていた。壁が崩れているため上半身だけが露出しているが、腕は壁に埋まっているようだ。長い黒髪の若い女性と思われ、服は薄汚れているが巫女服だろう。これだ、視線の正体は、これだったのだ。
SANC 1/1D3

面の女が探索者のほうへ顔を上げたかと思うと、ドゴッという音を立て、壁から強引に自身の片腕を引き抜いた。探索者に反応をさせる隙も与えぬうちに、胸ぐらを掴み上げると、低く唸るような声で何事かを呟いている。すると、突然心臓を鷲掴みにするような痛みが探索者を襲う。探索者はPOW13との対抗ロールを行う。
この世のものとは思えない声がする。「あれが憎い。殺せ。さもなくばお前を殺す」
女が手を離すと、痛みがおさまる。見ると心臓のあたりに手形のような火傷跡のようなものができている。(対抗ロールに成功で火傷跡はそんなに酷くない。テオドールを殺せなくても死ぬほどのダメージを負わされることはない。失敗で火傷跡は、焼けただれた酷いもの。殺さなくては死ぬ)

・面に〈目星〉
→ なにやら文字が彫られてる。しかし、探索者には見たことのない知らない文字だ。

女が話しかけてくる。先ほどとは違い、若い女の声だ。
「すみません…力及ばず、あなたに呪いがかかってしまった…」
「私はこれをどうにかします。あなたは私の実家へ行ってください。きっと力になるものがあるはずです」
「私の名前は…鳥羽聖」
長く話をすることはできない。
彼女が「オン・クロダナウ・ウンジャク・ソワカ…急急如律令」と唱えると、どこからか炎が生じ、身を包む。近くにいても熱く感じない。そうしてゴウッと燃えた炎はたちまちに消え、そこには面をつけた女は跡形も残っておらず、ただ壊され崩れた壁があるのみだった。
SANC 1D3/1D6

呪いを受けた探索者は、不気味な声の言ったことを果たさないと自分は死ぬということを直感的に理解する。


【鳥羽神社】
鳥羽聖の実家は容易にわかる。市内にある鳥羽神社だった。鳥羽神社は、神社とは言うものの神仏習合の影響を強く受けているのか、なかにお堂がある。おそらく仏も神も祀っているのだろう。
階段を登り、鳥居を潜ると、境内が広がっている。参拝客はいないようだ。ちょうど神主と思われる男が歩いているのに気づく。
声をかけると、神主は振り返る。そして探索者の姿を目に止めると驚愕の表情を浮かべた。小走りに近づいてくると、腕を掴み「こちらに」と引っ張っていく。
連れていかれたのは社務所のなかの一室のようだった。男と向き合う形で座らされる。和室なので正座だ。

「僕はここの神主をしている、鳥羽聖威(とば せいい)という。だから安心して、不審がらずに聞いて欲しい」
「きみ、その呪いはどこで、だれにもらった? 並大抵のものにはかけられない、相当強力な呪いだぞ、これは」
「そうか…聖が…。聖は僕の一人娘でね、五年前に行方がわからなくなってから心配していたんだ」
「聖が関わっているとしたら、きみにかけられた呪いは神によるものだろうね。荒御魂による呪いだろう」
「強すぎる呪いだから僕に解呪は無理だ…しかし、なにもしないわけにはいかない。なにか力になれないか考えてみよう。きみも手がかりがないと大変だろう? 聖の当時の荷物が部屋にある。自由に見てくれ」

聖の私室に案内すると神主はどこかへ去る。


【聖の私室】
木製の温かみのある家具が多く使われた部屋で居心地が良い。唯一異様なのは天井付近の壁に飾られた面だろうか。面はマンションで見たものとほぼ同じ。
部屋には机とマンションから回収したらしい荷物が置かれている。押入れがあるが、布団が1組あるだけだ。

・〈目星〉に成功
→ アルバムを見つける。聖のアルバムのようだが、奥の方に収納されていない写真が数枚挟まっている。聖と金髪の外国人が写っている。神主に聞けば当時恋人だったドイツ人のテオドール・ヒルデブラントだとわかる。

・〈図書館〉に成功
→ 日記帳を見つける。テオドールとの思い出が綴られている。彼は聖の「神懸かり」に興味を抱いているという。基本は楽しい思い出が綴られているが、違った様相のページを見つける。
「恐ろしいことに気づいてしまった。テオはなんてことを考えるんだろう。止めなくてはいけない。私が止めないと。だって、少しだけでも許されない」
日記はここで終わっている。


【神主の協力】
私室を出ると、程なくして神主と再会する。神主はなにやら袋を持っており、手渡してくる。
「僕にはこの程度のことしかできない。大変申し訳ない」
中には鞘に収められた短刀と、和紙を折って作られた人形が入っていた。
「この短刀には僕たちが祀っている神の加護がある。触れたものの不浄を清める力があるとされているんだ。この人形は形代といって、きみを助けることがあるかもしれない」
鞘から抜くと、刀身には文字が刻まれている。梵字のようだが、意味はわからない。

☆烏枢沙摩(うすさま)明王の加護を受けた短刀
基本命中率 20%
使用の際に1D10のSANを消費する。消費したSAN×5%の命中率増加。さらに任意でMP1の消費につき5%の命中率増加。
ダメージは通常のものに対しては、1D4+db
不浄なものについては烈火により即死。

☆形代
精神的、あるいは肉体的なダメージ・窮地から一度だけ探索者を救う。身代わりになると破れてしまう。


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