お客様は大歓迎 | 【導入】 ざあざあと鳴る雨の音を聞きながら、探索者はバスに揺られている。乗っているのは海夷野町と最寄りの街を行き来する送迎バスで、海夷野町へと向かっている最中だ。 海夷野町は北関東と南東北の境あたりに位置する太平洋沿いの小さな港町で、温泉と美味しい海産物が名物だ。人口はそれほど多くはない。主要な都市からまあまあ距離が離れており、アクセスが悪い。しかし、ゆっくり休みたいという人にじわじわと人気が出ている。そんな町に探索者は何らかの目的(ほとんど一般的には旅行だろう)のため、向かっている。 バスの車内には探索者の他にも客がいる。眼鏡をかけた30代半ば程の男性と、大きな荷物を抱えた中年の男性である。 眼鏡の彼は櫛田生といい、中年の男は飯田芳宏(目が少し離れていてぎょろりとしている)というらしく、それぞれ目的があるようだ。まだ町に着くまではいささか時間がある。少し世間話でもしようか…。 ○櫛田と話す 「僕は民俗学者をやっていまして、海夷野には興味深い資料を展示している資料館があるらしく、詳しいことはわからないのですが大変興味が湧きまして、こうして訪れてみたんです」 「へえ、みなさんは藤見旅館さんに泊まるんですね。僕は悩んだんですが、やっぱり地元の方の話が聞きたくて…民宿にしたんですよ。雛田さんっていう民宿です」 ○飯田と話す 「私は地元を出て一人暮らしをしながら大学を出て、それからそのまま向こうで就職したんですが、この歳になって地元が恋しくなりまして…。両親ももうだいぶ高齢になりますし、介護の心配もあるものでこうして帰ることにしたわけです」 しばらくすると、町が見えてくる。自然に囲まれた豊かな土地のようだ。町の中心部にバスの乗降場はあり、そこにバスは止まる。 運転手から送迎バスは1日に一往復のみで、午前10時着、午後16時発となっていると言われる。また、降車時に簡単なパンフレット代わりの地図を渡される。 軽く挨拶をすると、櫛田は民宿へ、飯田は実家へ、運転手はバス会社の事務所へと去っていく。運転手は事務所で過ごすようだ。 地図を見ながらなら容易に旅館へは行けそうだ。バス会社の駐車場から歩道へ出ると、バス会社の隣に神社があることに気づく。 ☆地図 簡単に町の宿泊施設である民宿と旅館の位置が示された地図。 中央にバス乗降場があり、東側が海岸、南に旅館、南西に民宿がある。その他数カ所食事処や土産屋が書かれている。 他の場所については尋ねれば教えてくれるだろう。水明は西にあり、北西には寺が、資料館は北東だ。 【バス乗降場】 バス会社で働く人間は町の住人ではない。よって様々な噂話を入手できる。旅館の従業員からも同様の情報を得られる。 「変な噂があるぜ。でっかい魚の死体が見つかったらしい。でも頭だけなんだと。君が悪いよな」 「ときどき、お年寄りがいなくなるらしい。痴呆でふらふらと出ていっちまうんかね」 「雨、やまねえな…。この間地震があったろ? 土砂崩れにならねえといいが…」 ☆地震は探索者も知っている。昨日から降り出した雨、その前に微かに地震があった。 夕方、バスに乗ろうとすると土砂崩れにより、道がふさがってしまい、帰れないという。復旧までどれくらいかかるかは不明。夜になると携帯の電波状況が悪くなり、圏外に。探索者たちは孤立する。 歩いていると町の人が思ったより少ないという印象を抱く。しかし、若者は多そうだ。話を聞くと風邪が流行って熱を出し寝込んでいるものが多いという。 【海夷神社】 ☆KP情報 町を守護する神を祀っているらしい。しかし、1925年のお客様の子孫の暴動を契機に彼らを鎮めるため、祀っている節がある。その際彼らの所持していた品を集め、保管している。しかし、数年前に浅浮き彫りを盗まれた。 境内の隅に着流しに羽織姿の男が立っている。大きめのサングラスをかけている。 「おや? 観光客の方かな? 見ない顔だ」 「この町の海産物は食べたかな? とっても美味しいだろう? 私のオススメはね、水明という店なんだが、よかったらいってみるといい。刺身からなにから海魚を使った料理がどれも絶品なんだよ」 「邪魔したね。旅行、楽しんで」 神社の関係者だろうか? 地元の人間のようだし、信徒の方なのかもしれない。 後日行くと、神主または巫女に会える。 * 大正の異変によって、彼らの所有する物をいくつか預かった。それを保管している蔵がある。 * それは彫刻だったり、絵だったり、なんらかの美術的作品であるようだが、よく見たことはないらしい。(見せてくれない) * 数年前にその中の1つである、浅浮き彫りが盗まれたため、蔵の中には誰も入ることができなくなった。 * 信用に成功で、資料館に展示されている浅浮き彫りとよく似ていると教えてもらえる。展示が始まった時期的に盗まれたものかと思われたが、細部に違いが見られたという。 * 大正の異変について。あるとき、町の多くのものが激しい悪夢と精神異常に襲われ、自殺者がたくさん出た。っていう混乱。1週間ほどで収まった。 【藤見旅館】 若い女将が出迎えてくれる。食事は広間で宿泊客みんなでとることになる。 ☆夜、窓から景色を見ると星がとても綺麗でたくさんの星を確認できる。やはり都会とは空気の澄み具合が違う。 ふと、視界の端でなにかが動いたような気がした。〈目星〉に成功で、南側にある崖のようになって海に面している場所に男がいるのがわかる。(飯田芳宏)そしてそのまま崖から落ちて行く。 SANC 0/1 ☆眠ると夢を見る。 海の底に巨石によってできた建築物が並んでいる。天を衝くように聳え立つ石柱などは、ことごとく緑色の滲出物を滴らせており、非常に不気味だ。壁や柱には、それらを埋め尽くすように見たことのない象形文字が並んでいる。どこか下方からは声にあらざるような声が何事か、理解も発音もできぬような音を紡いでいる。恐怖に支配されながらも、視界の隅、石柱が聳え立つ先の星空は美しかった。(何故か深海なのに空が見える) SANC 1/1D3 2回目以降も同じ夢。現実でも星空を見ていればアイデアに成功で、星座の並びも位置もほぼ同じだとわかる。 【民宿雛田】 老夫婦が経営しており、夫の母も一緒に暮らしているらしい。しかし、見かけない。 昼間に櫛田を訪ねても、櫛田は資料館かどこかへ行っていて会えない。 ☆夜に近くを訪れれば、目は大きく膨らみ、鼻は平らで、耳は異常に小さく、首まわりがたるんでいる、老婆のようななにかがよろよろと徘徊しているのを見る。よく見れば老婆の手には、水かきのようなものがある。なんなんだ、あれは。 SANC 0/1 【料理屋水明】 わかりにくい場所にある。しかし明治の終わりから代々続く老舗。優しそうな女性が接客してくれる。 「あらあら、観光客の方が見られるなんて珍しいわね。わかりにくい場所でしょうし、誰かの紹介かしら?」 「地元の人間は…特に敬虔な信徒の方は海魚をあまり好んで食べないのよ。私は違うからよくわからないんだけど」 「でもこの町の海魚を使ったお料理はね、昔はお客様が好んで食べたおもてなしの料理で、とても人気があったのよ。この店もそれがあってできたの」 「でも昭和の初め頃にはもう全然よ」 理由を聞いてみると、私にはわからないが昔の店主がノートに何か残しているかもと探してきてくれる。古びた帳簿を見せてもらうことができる。中には細かな支出の記録に、当時の出来事が数文ずつ添えられている。 『しばらく前から、魚を食わなくなってきた者たちがいるが、この頃にはもうすっかり食べることはしなくなった。きっかけはやはり、大正14年のあれだろう。あれ以来、皆、お客様の祟りを恐れている』 【海夷野資料館】 石造りの建物。町に関する歴史的資料が展示されている。館長の名は恵比寿一樹というらしい。 目星でいくつかのめぼしい資料を得られる。 * 海から来たお客様について あるとき、南東の海より、お客様がいらっしゃった。彼らは非常に高度な文明を持っていて、我々に様々なものを与えてくださった。我々は彼らを持て成し、彼らはこの地に住まうようになった。お客様たちは、南東の果てにある宇流辺よりやって来られた。その地を追われ、ここへやって来たということだろうか。彼らは今もなお、宇流辺に戻る日を夢見ているのだろう。 * 大正のできごとについて 1925年3月23日以降、多くのものが悪夢を見たと言う。一部のものは明らかに正気を失っており、精神に異常をきたしているのは誰の目にも明らかなことであった。中には高熱を出し、時々何事かもわからぬうわ言を呟いては、意識を飛ばしてしまうものさえ現れる始末だった。皆が言う夢の内容には、多くの一致が見られた。日毎に精神を病んでいき、しまいには自殺するものまで出る非常に深刻な事態であった。夢にはお客様が出るといい、宇流辺の夢を見させられていると言うものも現れたが、4月2日になると、ぴたりと事態は終息し、驚いたことに誰もこの異常事態を覚えていなかった。お客様に姿が似ておられる魚を食べるのが常習化したことによる、祟りに違いない…。宇流辺寺の者たちがそう言い始めて、町中に広まるのにそう時間はかからなかった。 展示の最後の部屋には、たった1つ浅浮き彫りが展示されているのみだった。展示物に触れないようにと看板があり、周りをガイドポールが囲っている。ガイドポールよりも中に体の一部を入れてしまったら、アイデアを振る。成功で怪物が大きくなったように感じる。何かをつかむようにしている二本の触腕がぐんと前方へ膨らみ出た気がする。 SANC 0/1 すぐにポールから出ればいいが、もし、出なかった場合浅浮き彫りから触腕が伸びてくる。アイデアに失敗していたものは回避が二分の一になる。触腕は、資料館の外へは追ってこない。捕まった場合、浅浮き彫りに引きずり込まれる。STR20との対抗ロール。失敗で協力者ごと引きずり込まれる。 SANC 1D3/1D6 浅浮き彫りは黒褐色で、木目には普通の木よりもたくさんの渦が見られる。なんらかの技能に成功で、現代のものでなく、太古の技術によって製作されているとわかる。 巨大な建築物のなかから、怪物が現れる様が彫られている。怪物には蛸に似た頭部があり、幾本もの触腕が伸びている。その内の二本はまるで何かを掴もうとしているかのように、彫り込まれていた。膨れ上がったゴムのような体を持ち、前足・後ろ足には大きなかぎ爪、背中には細長い羽が生えている。 さらに底の方には未知の言語が彫られている。(夢を見てたら似てると思う) クトゥルフ神話に成功で、読める。 「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん」とあり「ルルイエの館にて死せるクトゥルー夢見るままに待ちいたり」を意味している。 2日目以降の来館であれば、浅浮き彫りのそばに、櫛田のカバンが落ちている。 聞き耳に成功で小さな声だが、こちらを呼ぶ櫛田の気配がする。浅浮き彫りの方からだ。よく見てみれば、怪物の触腕の1つに掴まれるように男が彫られている。眼鏡をかけた男で、まさに櫛田生その人のようだった。 SANC 1D3/1D6 ☆櫛田の荷物 なかに研究のメモと思われる走り書きをまとめたノートが入っている。タイトルは、海夷野町の稀人信仰について、となっている。 「日本では各地で稀人信仰が見られる。稀人信仰とは外部からの来訪者たちを、食事などで歓待する風習であり、彼ら稀人を異界の神と認識していたために行われてきた。 海夷野では稀人をお客様と呼ぶらしい。これは地域によって様々だろう。客人には神という意味もある。 曰く、お客様は海から来た。南東に何があるのだろうか。 資料館にあるこの浅浮き彫りはきっと、稀人がもたらした物に違いない。かつての我々では知りもしないような技術が使われている。 稀人は宇流辺と呼ばれる場所から来たと言う。相当に古い記録らしく、きっとなにか彼らの言葉を無理矢理に我らの言語に当てはめたのだろう。きっと、もとは別の言葉だったのではないか? 稀人を祀っているのは神社だと思っていたが、違ったようだ。町の北西に宇流辺寺というものがあるらしい。どうやら、毎日夜7時ごろに檀家さんたちで集まっているようだ。部外者には厳しいらしいが、どうにか話を聞けるだろうか…」 |