たとえば葵と引き合わせてくれたのが神様だとしたら、茜は神様に毎日「ありがとうございます」と言い続けるだろう。もしこの出会いが運命でも偶然でも、茜はひたすらそのことを幸せに思う。そう考えながら、茜は携帯電話をより強く握った。茜の無言を不思議に思った葵が、「もしもし?」と呼びかけてくる。茜ははっと意識を戻して「なんでもないよ」と言った。
 付き合いだしてから二人は、こうして毎日夜に電話をするようになった。話の内容は本当にどうでもいいことばかりで、メールでも十分なものだったが、茜と葵は二人で話すことにこだわった。お互いの声を聞くだけで、なぜだか嫌なことを忘れてしまう。そして、コップに注がれた水のように、安心感が心を満たしていくのだ。だから二人は毎晩電話をする。
 葵と側にいたり、話したりしていると、自分の中に何か温かい気持ちが生まれていくのが茜には分かった。葵もまた、そんな気がしていた。二人が隣にいることは、生まれた時から決まっていたかのようで、その運命のような偶然のようなことに二人は胸を熱くする。


「茜さん、今何してるんですか?」
「葵ちゃんと話してるよ」
「もう、そうじゃなくて!」


 おかしそうに笑う葵の声が耳元で聞こえて、茜も笑顔になる。茜はカーテンを少し開いて、空を見た。真っ黒な空の中に、星がいくつか輝いている。今日は晴れているんだな、と思う。葵ちゃんは何してたの、と聞くと「何もしてませんよ」とまだ楽しそうな声がした。


「あのね、今すごく星が綺麗だよ」
「え、本当ですか?」
「うん。見てみて」


 それから少しして、「本当ですね!」とはしゃいだ葵の声がした。その声に、葵の嬉しそうな顔が思い浮かぶ。きっと葵は今あんな顔をしているのだろう、そう思うと茜もまた嬉しくなった。
 夜空に浮かぶ星を見ている茜。葵も、同じ空を見上げている。ただそれだけの事なのに、それは奇跡のようだと茜は思った。そして茜は並んでいる二つの星を見つける。それが自分たちに似ている気がして、茜は微笑む。
 広い宇宙で、数えきれないほどの星の中で、隣に並んだ二つ。あの二つは始まりからずっと隣にいるのだろうか。茜は考える。だけれど、いくら考えても分からなくて、葵の声をじっと聞いてみる。葵は今何を考えているのだろう−−もし一緒のことを考えていても、そうでなくても、自分たちは隣同士の星なのだと茜は思った。


「葵ちゃん、今、何考えてるの?」


 そう聞きながら、茜は遠くの星を見つめる。あの二つは、きっと消えてなくなってしまう最後まで一緒なのだろう。そして茜は、密かな自分の願いに気付く。私は、葵ちゃんの側にずっといたいんだ−−。葵が「えっと…」と話し出す。その答えが、自分の考えていることと同じだったら、好きだと言おうと茜はふと思う。きらきら輝く星たちは、茜と葵を照らしていた。




星屑たちのメイクラブ


title by 少年レイニー

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