God bless you





彼女は、後悔しているだろうか
私なんかと出会ってしまったことを。



「ごめん。ごめんね、ひさ子」


ありがとう、と嗚咽混じりの声で言えば、彼女はさらにくしゃりと顔を歪めた。そんな顔、させたい訳じゃなかったんだけどな。心の中で苦笑いをするのとは裏腹に、目からはどんどん涙が湧き出してきて、私の視界を遮ってしまう。彼女の顔がよく見えない。

ごめんね。私は、ひさ子みたいになれないから。こんな臆病で、醜くて、自分勝手な私を、どうか赦してください。





「……っ、さくら!」


「―――...忘れないから




――――パァン!!


私は引き金を引いた。
乾いた銃声が鳴り響く。霞んでいく視界の中、鉄の塊が脳を貫いて意識が消えてしまうその瞬間まで、私は彼女の瞳から目を離さなかった。もっとも、涙でよく見えなかったのだけれど。




ひさ子は、後悔するのだろうか。

…きっとするだろう、誰よりも真っ直ぐで、優しい彼女なら。
自分が止められなかったせいで私は死んだのだと、殺したのは自分だと。そんなわけないのに。それでも彼女は、ありもしない罪を背負ってこれからも生きていくのだろう。穢れきった、薄汚れた私の本当の姿を知っても尚、私のために泣いてくれるのだろう。優し過ぎるのだ、彼女は。

でもだからこそ、一緒にいるのが辛くなった。
嘘をついて、己の醜い姿を隠して生きながらえていることに耐えられなかった。




ひさ子は、何も悪くない。全部、私が弱かったからだ。
だから、泣かないで。
貴女には、目指す場所がある筈でしょう?
頑張って。ちゃんと、笑って。


ひさ子と歩んだあの日々は、すごくすごく幸せだった。だから、次はひさ子が幸せになってね。私のことは、忘れていいよ。



「神様」
本当にそんなものが存在するのなら、お願い。


どうか。

神の祝福よあれ
(どうか、彼女に幸せを)







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