多々良 | ナノ
  

"大好き"も"愛してる"も、





段々と唇に、腕に感じてる熱が冷めていくのがわかる。それとは裏腹に、生温かい液体がどんどん私の服に染み込んでいく。





合わさった唇が、

音もなく。





―離れて、いった。






「―――……さくら…、」
「……たた」



「…………ごめ、ん……。」







どうして、謝るの。
どうしてこんなに冷たいの、ねえ。



苦しそうな顔しないで。そんな風に笑わないで。いつもみたいに笑ってよ。頭を撫でて、名前を呼んでよ。ねえ、






ねえ、多々良





がらがらと。私の中で色んなものが音を発てて崩れていく。

言葉を吐き出そうとしても何を言えばいいのかわからない。視界はもう、頬を伝う何かによって、絵具が滲んだように歪んでしまっていて。君の身体から流れ出る赤いそれに濡れて張り付いた服が鬱陶しい。






強く、しっかりと絡めたはずの指に



温もりは残ってはいなくて







「……っ…、……多々良…。」






何度名前を呼んでも、私の声はもう届かなかった。





"大好き"も"愛してる"も、もうけることはできないんだね
(そして君が愛を囁いてくれることも、)
(…もう、ない。)


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