「…あれだけ言いましたよね」 「…アレン、さん?」 「僕がどれだけあなたを探したと思ってるんです?」 「あ、あの、アレンさん、その」 「なんです?」 「顔が近いです。ついでに身体も近いです」 「黙って下さい」 「(そっちが聞いたんじゃない)」 「何か言いたいんですか」 「いえ、なんでもないです」 「全く、師匠といいあなたといい…」 「あはは、ごめん」 「…許さないから」 真っ暗な部屋の中、押し込まれたわたしの肩を、押し込んだ少年がそっと抱き寄せた。その手は小刻みに震えている。鼻に押し付けられたのは、彼がエクソシストになったという証の十字架。…何年ぶりだろうか、こうしてこいつの姿をちゃんと見るのは。あの頃はわたしの方が背は高かったのになあ、男の子の成長ってほんとうに早い。何も言わずに出ていったわたしを心配していてくれたんだろうか、 ばかだ、なまえはばかだ なんて可愛い言葉が耳朶をくすぐる。ごめんね、アレン。もう傍を離れたりなんかしないから。頭を撫でてやったらアレンが耳を真っ赤にさせて怒った。ああ、昔のままの君だね 「アレン可愛いね」 「…子ども扱い。 同い年でしょ僕ら」 「うん、そうだったね」 「なまえ老けた?」 「そうかもね」 「否定しないの?」 「うん、なんだかね、ほっとしちゃって」 きょとんとした顔をしたアレンの顔が歪んで見えた。ほっこり、胸があたたかい、いや、あつい。この感情をひとはなんと言うのだろう。安堵にも似た、安心という言葉を大前提にする感情。硝子玉みたいに光を反射しているであろうわたしの瞳を見てアレンは微笑んだ 「泣き虫なのは変わらないね」 「うるさい」 「なまえ、おかえり」 「…うん、おかえりなさい」 「あれ、なんでおかえりなさい?」 「ひみつ」 「あはは、変なの」 きっとこの感情に名前を付けるとしたら、それは、 ( 幸せを綴るぼくを許せ ) 110222/tnxへそ |