「(やっぱ信用、されてねーんかな、おれ)」
布団から腰を上げて窓際で肺から思い切り煙を吐いて柄にも無く悩んでいた
窓の外はまだ見慣れた闇が広がっていた
視線を布団に戻すと健やかな寝息を立てているきれいな頭が見えた
もうこいつがいる生活をするようになってから一年余り経っていた 思い返すとあっという間だ
「(最初の頃はしつこく訊かれたけど最近は言わなくなってたから油断してたが、今日のあいつの思い詰めた顔、)」
正直見ていて楽しいものではなかった
見ているこっちが辛かった
あんな顔をさせてしまうくらいならいっそ、全て話しても良いのだろうか
出来ればそれは避けたかった
自分の侵した数えきれない、そしてこれからも増え続けていくてあろう罪を告げる事によって、彼はどんな反応を示すだろうか
きっとそれでも構わないと今までと変わらず傍にいてくれるであろう
だけど決して自分が日々行っていることは良いことではない、何もかいていないまっさらな紙を塗り潰すかのようで嫌だった
自分が汚れるのはいっこうに構わないが彼がそうなるのだけは嫌だった
守ってやりたいと思うくらいだ
「こんな情けねえ事かんがえちまう位大切に思ってんのにな、どうしてこうも伝わんねーかな」
そもそも好きでもねーやつ何べんも抱いたりするほどおれは暇じゃないんだけどな、半ば薄笑いしながら右手に添えてた煙草の火を消して彼に近付いた
手入れのされている薄い茶色の髪に整った綺麗な顔立ち、余計な肉も無く掛布団からすらりと伸びる足が月明かりで真っ白に照らされていた
「(こいつ何でおれなんだろ、相手なんてそれこそ余るほど居るだろうに)」
こんな三十路を手前にしてる野郎が、
女々しくて笑える
起こさない様に頭を撫でると指先から体温が伝わり愛しさが込み上げる
きっとこいつはさっきの謝罪の意味も取り間違える程に盲目でバカ正直で
「(こんなに好きなのに泣かせてばっかで、おれは本当に駄目だな)」
誰よりも大切だから、伝えられない、教えられない事は沢山あるけど
伝えられることはいつまでも餓鬼みたいに意地をはってないで、起きたらちゃんと伝えようか、と涙に濡れていた瞼に口付けた
まじオッサン厨二病、2人には幸せになってほしい*20110518