ふ、と目を開いて空を見上げると、そこには一面に塗り付けられたかの様な幾千の星が散りばめられていた
「うわぁ…」
横から感嘆の声が聴こえて、空から横を見ると、当たり前の様に王子が居た
すると王子も此方に気が付いたのか、笑顔を向けてくれる
「綺麗ですね」
「え?…あぁ」
そうだな、と返したあと、そういや此処は一体何処なんだろうか、という疑問に陥る
見たことがない風景と、そこまで寒くも無いし、かと言って暑い訳でもなく、たまに吹く冷たい風が頬にさすのが心地よい
とにもかくにも、王子がめいっぱい夜空の星を堪能した頃にはきっと神がいつもの家まで帰してくれるだろうな と あまり深くは考えない
「いつもは明るさや濁って隠れてて見えないけれど、ほんとうはこんな沢山星が見えるんですね」
見上げる白い首筋が目につく
王子はどこまでも綺麗だ
顔立ちは勿論だがなにかそれだけでは言い表せないものがある
「神に感謝しなきゃな」
「そうですね、それよりよしくん」
王子はほら、と空に指をさす
「僕は星とか、あまり詳しくは無いですけど、少し色がついてたり、輝きがちがったり…いつも見えないだけで本当はこんなにまばゆい沢山の星があるんです。それって 素敵じゃないですか」
「王子はロマンチストだな」
おれはそんな真剣に語る王子の横顔を直視出来ないのを隠すようにはは、と思わず笑うと王子はちょっとむくれて、それも可愛いな、とか密かに思ったりした
もうよしくんなんか知らないでございます、とその辺に座り込んで黙って空を見上げていた王子がいきなり立ち上がり、ばっ、とおれを見る
「よしくん、いまの見た?」
「はあ?」
見開いた目と乱れた口調からして、何かあったのだろうか
とにもかくにもこんな王子は稀にも見れない
「だから 今の見たでございますか?」
「? わりぃ見てないかも」
「いま、流れ星が…」
「うそ」
顔を見上げてもそこには散りばめられた星が無数に拡がるだけ。
勿論流れ星の姿は無かった
「ラッキーじゃん」
「よしくんと一緒に見たかったでございます…」
王子は俯きがちに呟く。
「それにお願い事をするのを忘れてしまいました」
「お願い事?」
王子はまるで子供の様な事を真剣な顔をして言うから面白い
続けておれは、王子に
何を願おうとしたんだ?
と聞こうと口を開きかけたが、紡いだ
怖くて聞けなかった
王子は自分との生活を願ってくれるだろうか
それとも他の誰かとの幸せを願うのだろうか
王子の願い事なんざおれにはわからなかった
星空の下で輝く王子の横顔は余りにも綺麗で余りにも遠い
「よしくんは流れ星に何をお願いするでございますか?」
微笑む様に王子はおれに無邪気に聞いてくる
おれは適当に世界平和と答えた
空を見上げると一筋に流れる星が見えた
おれは永遠に叶うことは無いのだろうゆめを願った
OJ←DJ*0412