とりあえず中に入ろうと王子を促し、部屋に入り、このまま寝る、という雰囲気でも無かったのでとりあえずこたつに二人で入り、お湯を沸かして何か煎れようとおれはいつものように腰をあげようとした

すると、隣にいた王子に腕を掴まれ、僕がやります。と半分上がった腰を無理矢理下ろされ、代わりに王子が台所に向かう。


「王子!気を付けろよ!?」

我ながら過保護な台詞だったと思う。
すると王子はまるで見透かすかの様に

「ふふ、よしくんったら過保護ですね。わかってますよ」

と振り返った。
その姿に何故か安心しきってしまったおれはこたつの温かさと、目の前にある何も動きを見せない雪だるまを見つめることにより、睡魔に襲われ、少し眼をつむってしまった


そこからどれだけ経っただろうか。

はっ、として眼を覚ますとそこには王子と湯気がたつ紅茶があった

「おはようございます」
「ん…ん、ああ。わりぃ、」

おはよ、と適当に返事をする

ふと視線を上げると、先程目の前に存在した雪だるまの姿が無かった

朦朧とした意識の中机の上を見ると、そこにはすっかり溶けてしまった雪だるまの姿があった

「うわっ!」

思わず大きな声を出してそのもう原型のない雪だるまをそっと手にする

「よしくん?」

「やべ…そのまま置いてたらそりゃ、とけるよな、ごめんな、」

王子、と謝ろうとした瞬間だった
手に雪と、溶けた水とは
別の感覚に違和感を覚え、良く見るときらりと光ったものがあった

それを手にして雪の中から取り出すと、それは

「ね、ねっくれす?」

余りの驚きに変な発音をしてしまった
ばっ、と王子の顔を見ると、先程と同じ満面の笑み。

「よしくん、誕生日おめでとう」

「は?」

嘘だろ?と携帯で日付を確認すると確かにそうだった

「やっぱり。よしくんの事だから忘れてるんじゃないのかと思ったら、まさにその通りでございましたね」

「え あ、あぁ…だって最近何かと忙しくって…」

正直、驚き過ぎて頭が回らない
今日が自分の誕生日だったという事は勿論、まさか王子が自分の為にこんなことをしてくれるなんて

「ありがとう、嬉しい。」

思わず素直に感想を述べるとまるで待っていたかのように王子が抱きついてきた

「よしくん、よしくん、生まれてきてくれてありがとう。よしくん、大好きです。」

「ん…ありがとう、おれも、その…お、王子の事、」

「僕の 事?」


ん?と小首を傾げて腕をおれの首に回し王子は繰り返して笑っている
先程とは全く別の、にやにやした笑みだった。

「なっ、!なんでもねえ!」

「ふふ、よしくん、可愛い」

「うるせえ!ほら、さっさと寝るぞ!」

「おや、寝ちゃうんですか?」

腕を首に回してることをいいことに王子はまた唇に触れる

「まだ、夜中の3時でございます。」

王子はおれに目をあわせて呟く。


ああ

そうか、だからこいつは

「お前、はなからこれが狙いで深夜わざわざおれを起こしたのか?」

「はい」

と悪びれもなく言うものだから今度はこっちからキスをした

王子はまた笑う
先程と同じにやにやした笑みだった。











今更DJ誕生日ネタ 河原さんありがとうございました!*20110406
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