人と人は、元々二つの個体なのだから完全にひとつになんてなれやしない、全てお互いを理解して、わかりあえるなんてこと出来ない

と誰かが謳っていたが

そんなのわかってる
わかってるけど
だけど

じゃあ
元々ひとつだったおれたちは、一体どうすればいいんだ。


「 よしくん、」

名前を呼ばれてはっとなる
自然と瞑っていた瞼をひらくと、暗がりの中にぼんやりと王子がいた

「ひょっとして、寝てたんですか?」

「まさか」

「流石に途中で寝られるのは、困ります」

そっと王子の手のひらが頬をなでる

「ん…ちょっと、考え事」

「こんなときくらい、考え事なんて、しないでください」

やさしい手のひらの体温の心地よさに目を細めていると、急に耳元で王子に低く、あまくささやかれて、頭が、背中がぞくりとする

言われなくとも、最中は頭のなかも、中も、おれのなかは王子でいっぱいになる
王子の事しか考えらんなくなってしまう

さっきの考え事だって、王子の事だし

言いたくても、今のおれの口からは王子に触れられて、不規則な吐息しか出せない

「よしくん、かわいいでございます」

「あ、んあ、はぁ…」
こうも意識して聞くと自分でも驚くくらいたかい女みたいな声が恥ずかしくって、思わず口を手で覆うと、すかさずあいていたほうの王子の腕がのびて、手首を捕まれる

「や、やだ、おうじ、」
「声、おさえないで下さい、我慢しなくて良いですよ」

「でも、っはずかし…あっ」

「二人きりなんですから、良いじゃないですか、それになんかそんなことされたらもっと聞きたくなります」

王子の手がやわくうごく、恥ずかしくてきもちよくて、頭のなかがへんになる

二人きり、
と言われてなんだか辛くなる

こうやって、何度も密着したり、繋がったりしてるのに、ひとつになれない気がしてならない

本当に一つの時は、あんなにも2つにわかれる事を恋い焦がれてたのに、我ながら浅はかだとおもう

「ひあ、んあっ、ああ」

「よしくん、さっきからぼーっとして…もっと集中して欲しいでございます…」

気がつけば王子の指先は他の場所に移動していて、既に解されてる最中だった

「や…おうじ、ひぁっ あ、」

「…よしくん、あの、いいですか」

普段はほわほわしてて、猛暑でも汗なんて全くかかずに涼しい顔してすましてる王子が、こんなときでしか見せない、王子の余裕のないつらそうな顔
普段と違う顔つきに、どきどきする
なんでこんなにも、王子のひとつひとつに魅せられてしまうのだろうか

「…ん、いいよ、」

そんな、惚れてる人間につらそうな顔されて頼まれたら、断ることなんて出来ないに決まってるだろ、
内心そう思いながらもゆっくり腕をのばして、滲む汗ではりついてる王子の前髪をとりはらう、すると王子は決まっていつもの笑顔で、ありがとうございます、と微笑む

それと同時に押し寄せる質量に、思わず顔を歪ませてしまう
何度してても慣れない感覚が切ない

(おれが女なら、なんて思っちゃ駄目か)

思わず涙が溢れた、これが切なさからなのかいたみからなのかは自分でもわからない

「っ、いっ…たぁ…」
「ごめんなさい、痛いですよねっ…すみません…」
「っはぁ、王子、は、気にしなくて、いいから、謝んな いで、」

つづけて、

だらけていた腕を王子の肩に預けてぐっと身体を引き寄せて耳元で呟く

「よしくん、そんなこと言われたら、僕」

足の付け根の先で王子が動く感覚
さっきよりもずっと奥の場所に入ってくる

「あっ、あ、はぁ、んっ」

痛みの中に、他の感覚が芽生えはじめてきて、みだれる呼吸と遠退きそうになる意識を必死にとりとめる
必死に王子にしがみつく
そんなことなんてお構い無しに王子が口をひらく
「よしくん、よしくん、僕は、よしくんの事、全て理解しようなんて、思ってないです」

「えっ、おう、じ、いまっ、あぁっ」

「昔は違えど、今は立派に二人の人間なんです、そりゃあ赤の他人とまではいきませんが、ちゃんとお互い意志とか、気持ちがあるじゃないですか、全てわからなくったって良いと思うんでございます…まぁこうやって、よしくんが考えていること、わかってしまう時も、ありますけどね」

うすく笑って、王子はおれの涙を汲み取る様に瞼にキスをする

ああ、なんだ
全てお見通しだったということか
王子が優しく微笑む

もうすき、だいすき
こんなにもいとおしくて仕方ない
おれは一体何に悩んでいたのだろうか、そんなのばかばかしくなる
王子を みてると、そう思えてくる

自然と王子の肩にかかってる両手がつよくなって、抱き寄せる

「っ、王子、」

「はい」

「おれ、王子の事すき、凄くすき、だいすき、」

「それも、知ってました」


こんなにいっても
たりないくらい。




只のバカップルですやん*0815
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