ふと眠りから覚めた
外から音が聴こえてきた
それが雨の為だと気付くのにそう時間はかからなかった
まだ重い瞼をうっすら開いて窓を見るとカーテンの裾から小さく青い光が漏れていて
既に明け方に近いことがわかった

まだ少し 寝れる、とまた瞼を閉じる
自然と耳に入る雨の音は明け方の静けさに響いていた

その心地好さにまた窓に目をやる
さらさらと流れるように細かく雨は音を立てるそれには少し冷たさを帯びている様に感じて、6月ももう終わりだというのに肌寒いような感覚に陥った

はあ、とため息をもらすと

「よしくん、起きてたんですね」

おはようございます、と顔だけ此方に向けて王子は微笑んだ
どうやら彼も少し前から目を覚ましていたようだ
返事を、と思ったが寝起きで思うように声が出ない

仕方がないから かわりに小さく頷いた

「いいですね、静かで、基本的に天候は晴れの方が好きですが、明け方の雨と言うのはなんだか風情がありますね」

少し離れてひいてある布団から王子は呟く
薄暗くてもよく映える金色の髪がきらきらと光る
おれはまた黙って頷く

そしてまた訪れる沈黙

王子はまた眠りについたのだろうか
雨の音だけが二人しか居ない室内に響く

なんとも言えぬ心細さと虚しさを感じてどうにかして沈黙を破りたかった

やっとの思いでおうじ、と掠れた声で王子を呼ぶとはい、なんですか といつも通りの声でにこりと目を細める王子がすごくいとおしかった

「…手、握って」

おれは薄い毛布から手を目一杯伸ばした。

王子は優しく微笑むと少しこっちに身を寄せて手を伸ばしてくれた

王子の華奢で、だけどどこかしっかりしている指がおれの指に絡まる

体温が掌で共有されるような感覚は、すごく歯痒くて、だけど嬉しくて仕方なかった
手を繋いだあとは二人とも無言だったけど、心細さは不思議となくて、出来る事ならずっとこうしていたいと思いながらゆっくり瞼を閉じた。




0706
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