「僕は自分が世界で一番だと思っていました。」
王子は突拍子もなくそうおれに呟いた。
おれはどんな反応を示していいのかわからず只眼を見開き、王子の眼を見つめることしか出来ずにいた
いくらおれでもそんな事いきなり言われても正直困る
勿論王子は顔も整っているし耳元で艶やかにささやく声も人を(おれをなのか)魅了するほどだし、性格だって、このような発言を軽々としてしまうような尋常成らぬ非常識さを抜けば、優しく温厚である
なにより、このうえなく、気品漂う風格は、美しいと思う
「いやだけどな、王子、お前…」
おれは思わず呆れ顔になってしまう
こいつがナルシストだとは知らなかった、出来ればあまり知りたくない事実であった
そんな素振り見せなかったから気付きもしなかった、そんなまさか、自分と一心同体の様な存在である彼がそんな性癖を持っているなんて
正直、少し残念だ
「勘違いしないでくださいよしくん、僕はその、自分が大好きとかそういうのが言いたい訳ではなくてですね」
「訳ではなく?」
ああなんだ良かった、
はあと息をつき
ひとまず安心する
「僕の世界は僕の住んでいたお城の中だけでした、お城の中だけの人間が人間の全て、お城の中にある本の世界は全てお伽噺、食べる所も寝る場所歩く場所もせいぜいお庭、全てはお城の中なのでございます。」
王子はおれと出会う前はまるで幽閉の様な生活を送っていたと聞いた。
「お城の中にいる人は僕の一声で働き、僕の一声で生活をして、食べ物だって僕が食べたい時に食べたいものが出てくるし…」
「まて、まてまてお前そんなお姫様の様な生活を送っていたのか!?」
「いやですねよしくん、僕は紛いなりにも王子ですよ」
そんな何もしなくてもいいような生活送っていたのに
「なんでおれなんかと…一緒に居るんだ…」
現に王子は今おれと一緒におれが借りているアパートに住んでいる
勿論ここには王子に仕える使用人も居なければ王子の口に合うような料理もない(作ってるのはおれだしな)
考えてみると何故王子と自分が一緒に住んでいるのか不思議で、また自分との身分の違いに虚しさと惨めさを覚える。
おれと居て、王子は幸せなのだろうか、
「違いますよ」
「えっ」
「僕は今はこうやって、お城から出て、外の世界を知り、人々と交流して、色んなものを食したり…色んな音楽に触れたり、僕は素直にこの世界はきれいだと感じたのです、そういう事が出来るのってよしくんのお陰だと思うのでございます。」
「はあ…」
「よしくんに出会って、よしくんを好きになって、よしくんと一緒に居たいと思わなければ、きっと僕は一生世の中はこんなきれいで、美しい世界だと気付けなかったと思うのです、だから僕の世界は、よしくんみたいなものなのでございます!」
王子は一気に喋り疲れたのか、ふう
と一息つくと紅茶でも淹れますかと立ち上がる
「ちょ!ちょっと待て!」
おれはまた通常運転に戻り始めた王子の足取りを止めた
「ん?よしくんどうかしましたか?」
「い、今のは…何だったんだ?」
「いつも通り、愛の告白ですよ?」
するといつも通り、にこりと王子は微笑んだ。
おれはキッチンへと足取りを戻す王子をみて脱力した
これは彼なりの冗談だったのか、いや、只の暇つぶしだろう
「真に受けるんじゃなかった、こっぱずかしい奴…」
(つまらない話ですよ)
と
僕は言う
1日中この歌がうるさかった、内容薄い癖にタイトルと本文やたら長い*0601