始まりの言葉はパパからの言葉だった
「最近色々と大変だし、息抜きにシンオウ地方行ってこいよ。あそこには花見のベストスポットあるから心身ともに癒されて来い」
と言って、あたしにシンオウ行きのチケットを渡してそそくさと消えてしまった。あたしは思わずはあ?と腑抜けた声を出したが、問いただしたい人物はすでに消えており、ただ呆然と立ち尽くしていた
片手には人数分のチケット。しかも日帰りだ。当日チケットなので今日しか使えない。なんだか無駄にするのは勿体無いし、せっかくシンオウ地方にも行けるのだから…ここは行くしかないだろう!と思い、あたしはいい笑顔を浮かべた
***
「つっいたー!」
あれから急いで準備をしてシンオウ行きの飛行船に乗って、希色と目を輝かせながら外の景色をみたり、飛行船内にあるバトルフィールドで少年とバトルしたり、ご馳走を食べたりして、シンオウ地方についた
やはりイッシュと言う大都会と違って緑が豊かな場所なので、なんとなく空気が美味しく感じられる。目一杯背伸びをして深く空気を吸い込み、両腕を降ろすと共にふー…と息を吐いた
「やっぱりイッシュと全然雰囲気違うねー」
「せやなー、俺はイッシュ生まれやから新鮮に感じるわ〜」
「え、イッシュ生まれなんだ!?」
ここに来て、花火の出身地を知った。他にも聞いてみたら夢は当然ながらイッシュ、恋と希色はシンオウ生まれと言うことが分かった
イッシュ生まれ組みはシンオウ地方を未知の世界に入ったかのように思ってるのか、辺りを物珍しくキョロキョロと見渡していた。
夢は当然だがあの普段は変態な花火でさえもその姿を見て可愛らしく思えたから、なんだか不思議である
かく言うあたしもシンオウ地方は知っていても、来るのは当然初めてなので二人のことを言えず、キョロキョロと辺りを物珍しく見ているけどね
「んで…その花見の場所はどこなんだ?」
「え?あぁ…えっとね…」
恋に聞かれたのであたしは、パパからチケットと共に貰ったパンフレットをエナメルバックから取り出す。パンフレットと言ってもパパの手書きだけどね。まぁ、なんと言うか暖かさを感じるからいいんだけど。
頬をぬるみながら手書きパンフレットを見て、あたしは固まった。覗いてきた恋も夢もあたし同様に固まった
中身はあたしへのメッセージ(うざったい内容だ)と花見ベストスポットがある地名と簡易の地図。しかもその地図はなんかぐねぐねと線を書き、矢印の先に「たぶんこの辺」と書いて丸で囲んでいただけ。面倒臭がり屋のパパらしいと言えばらしいが……ハッキリ言って分からない。汚い。適当すぎる。
パパへの怒りが頂点に達して、持っていたパンフレットをぐしゃりと握り潰してプルプルと震えていた。恋は溜め息を溢し、夢は表情は分からないがオーラがとても怖い。花火は苦笑いをして、希色はこの状況が分からないためオロオロとみんなを見渡していた
これは…大いに詰んだ
どうすんだよ…これ…とみんなで困り果てていると
「あ、の…?」
後方から女の子の可愛らしい声が聞こえた。あたしはそちらをみれば、茶髪の女の子と赤い髪をした物腰が柔らかそうな男の子がいた
あまりの美男美女にあたしは思わず見惚れていた。なんだこの美男美女は…眩し過ぎて直視出来ないぞ…!目の保養か…有り難や有り難や…
思わず合掌をしてお辞儀しそうになったところを恋が頭を抑えてくれたのでなんとかそれをせずにすんだ。だがしかし、めっちゃ頭痛いんですけど。手加減してないよね?手加減する気ないよね?
あたしがあだだだ!と痛みに耐えているところを見て、これは使いもんにならないと判断したのか夢が代わりに彼女の問いに答えた
「はい、なにかご用かな?」
「あ、いや…何か困ってる風だったので、声掛けたんですけど」
なんと言う女神!あたしはこれはチャンスだ!と言わんばかりに恋の手から抜け、彼女たちに花見ベストスポットへの道のりを聞くことにした
「あの、あたしたちここに行きたいんですけど、分かりますか?」
「えっと………あ、灯勇ここって…」
「ん?なに?サラ…あ、ここ僕達も行く場所だね。」
「うん。あのじゃあ、私たちと一緒に行きますか?」
ニコッと笑うサラちゃんかな?たちはもう天使にしか見えなかった。
しかしそんな迷惑をかけていいのだろうか…あたしは少し困ったように考えこんでいれば、赤い髪をした彼…灯勇くんかな?が「困った時はお互い様だよ」と微笑むもんだから、あたしは思いっきり首を縦に振った
「ありがとうございます!」
勢いよく腰を折ってお礼を言えば、二人は最初は目を丸くしたがすぐにクスと笑い、どういたしまして。と言ってくれた
なんだこの美男美女は素敵すぎる。神だろ。さっきから女神とか天使とか神とかいろいろ例えてるけど、つまるところ最高に素晴らしい人たちってことです
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