PUZZLE 16


 時間をかけて指を根元まで埋め込み、引き抜いてはまた差し入れる。
 道弘が何のためにそんなことをしているのか、わからないほどカズヤも子供ではない。
 まとわりつく異物感をじっと耐えていると、滲み出る体液のぬめりを借りて指を増やしながら、道弘が中を広げていく。すると、偶然にもその指がカズヤの感じるポイントを掠めたらしい。
「アッ、みっちゃ……! ヤッ、そこっ……!」
 びくんとカズヤの腰が跳ね上がり、それと同時に道弘の指をキュウキュウに締め付ける。
 反応に驚きながらも、道弘の指は執拗にその場所を擦り続けた。
「やぁっ、あぁっ、アッ」
 耳に届く甲高い喘ぎ声と、いやらしく響き渡る水音。
 自分の指でそれだけ感じてくれているのだと思うと、もう、たまらなかった。
「ああくそ!」
 道弘は短く呟いて、そこから一気に指を引き抜く。
 本当は、まだ早いかもしれない。でももう限界。
「ごめん。もうこれ以上我慢できねえから……痛かったら言って」
 そうして取り出した道弘自身は、カズヤに負けないくらいに先端をぐっちょりと濡らしていた。溢れ出てくる体液を入り口に塗りつけてから、ゆっくりと頭を埋め込む。
 苦しそうなカズヤを気遣い、キスや愛撫を施しながら、指よりも更に時間をかけてすべてを挿入する。カズヤの中は、蕩けるように熱く、道弘を包み込んだ。
 そのとき道弘が感じていたのは、不思議な感覚。
 体はこれ以上ないほど興奮しているというのに、どこかにほっと落ち着く自分がいる。
 さほど経験はないが、カズヤは、これまでに抱いたどの女の子とも違う。言うなれば――「しっくりくる」――そんな感じだった。
 抱きしめた体も、感じる体温も、すべてがパズルのように、ぴたりとはまる。
 それはまるで、道弘に欠けていたたった一つのピース。
 カズヤとの初めてセックス――それは、最後のピースが埋まった瞬間に思えた。





「ごめん、本当、なんか、俺……」
 いくらなんでも、がっつきすぎだろう。
 事後、道弘は、自分自身に呆れていた。
 好きだと伝えるだけのつもりが、衝動に任せて抱いてしまい、結果、カズヤにかなりの無理をさせてしまった。
 上掛けに包まり横になるカズヤを見ながら、道弘は小さく呟く。
「なんかお前が可愛くて……止まんなかった」
 幼い頃から知っているカズヤ。それなのに、自分の腕の中で見せた反応や、艶めいた表情は、カズヤをまるで別人のように見せていた。
 だがそれは、道弘の視点が変わったからなのだと、道弘自身、すでに気がついていた。「従兄弟」ではなく「恋人」という視点で見るカズヤ。それはきっと、たまらなく可愛く、そして今まで知らなかった様々な面を、まだまだいくつも持っているのだろう。
 できればそれを、これからも、俺にだけ見せてくれるといい。
 慈しむように、道弘はカズヤの髪をそっと撫でる。
「みっちゃん……、俺ね……、みっちゃんが……す……」
 すう、と眠りに誘われて、カズヤの言葉が途中で切れる。
 答える代わりに道弘は微笑んで、寝顔にそっと、優しい口づけを落とした。

END


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