-和感2-






「――…?」


一人分の食器、一人分のマグカップ、一人分の布団。
何もおかしいところなんてないのに、どこか違う気がするのはどうしてだろう。
初めは何とも思わなかったけど、この家に来て2週間。
最近何かが足りないような気がしてならなかった。
なのに何が足りないのか自分では分からなくて、あんまり気になって仕方ないから沢田さんに聞いてみようと思って家を訪ねた。
そこは想像してたよりずっと大きくて気後れする。
沢田さんは一体何をしてる人なんだろう。


「こちらでお待ち下さい。」
「あ…、はい…。」


招き入れられた家(というよりはお屋敷かも)の中を気後れしながらついていった先の部屋で、案内してくれた人はそう言い残すと私を残して出ていった。
私一人に対して少し広すぎる部屋。
なんだか落ち着かなくて辺りを見回すとソファの向かい側にかけられた一枚の写真が気になった。
写っている人達は私の位置からじゃよく見えなくて、近付いて見てみるとそれは集合写真。
写真の真ん中に沢田さんがいて、周りに何人かスーツを着た人達が写っている。
何かの偉い人たちなのかな、よく、分からないけど。
みんなどこか親近感があるような気がして不思議だった。
だってこの中の誰も、私は知らない人なの、に。







「――え?」


沢田さんの、後ろ。
ななめ後ろに私がいてその隣。
私と同じ髪型をした、左右の目の色が違う男の人が写っていた。
心臓の音が早くなる。


「…どうして…、」


驚いたのはそこに私がいたからじゃなかった。
その隣の人が同じ髪型をしているからじゃなかった。
目の色が違うからでもなかった。
彼を見た瞬間私の中で何かが音を立てて動き出したみたいで、なのに。


「どうして…!!」


私がこの人のことを何も、知らないから。





(とてもだいじなひとなのに。)






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