真夜中、ふと、目が覚めた。
 敵襲ね。
 階下からも物音がし始める。
 私も出ていったほうがいいかしら。
 暫し逡巡した後、体を起こした。
 不意にがしっと腕を掴まれ、引っ張られる。
「行くの?」
「ええ、一応」
「私も行くわ」
 今から、もう?
 まあめずらしいこと。
 ナミのお眼鏡に適うような品物があればいいけれどね。
 連れ立って甲板に出ると、すでにドンパチ始まっていた。
 女と見るやすかさず仕掛けてきた幾人かを、さっと処理する。
「ねえ、あれやらないの?」
「あれ?」
「分身みたく、体ごと咲かすやつ」
 ナミが物陰から、わくわくで充ち満ちた顔をして私に問う。
 それが見たくて、戦闘の場に出てきたのね。頼んでくれたら部屋でも見せてあげたのに。
 とりあえず戦況を確認。
 あとはルフィたちが片付けてくれるでしょうし、遊んじゃっていいかしら。
「はい」
 戦線から退いて、ナミにお披露目。
「はー……すっごいわよね、ほんとこれ」
 床から咲いたハナの私を、あらゆる角度から観察するナミ。
 そんなに見られちゃ、視線がくすぐったいわ。
「ロビン、すごい」
「ありがとう」
「でも……はい、質問があります」
 ナミが挙手する。
「ナミさん、どうぞ」
 学校ごっこ? 楽しそうね。
「どうしてこのロビンは服を着ているのですか? どうして腕や脚のときみたく体そのままじゃないのですか? つまり何が言いたいかというとね、」
 はい、学校ごっこ、おしまいです。
 さっとハナの体を散らす。
 ああんとナミが不満げな声をあげた。
「疲れちゃったわ。私戻るわね」
「ちょっとぉ」
 だいたいこんなとこでそんなもの咲かせられません。
「いいの? お宝頂かなくて」
「あ、そっか! ああっ、うーん、いや、要る」
 もー寝ないで待っててよと言いながらも、目をベリーにして駆け出したナミ。
 ふふ、相変わらずね。
 ふぅと一息ついて、私は先に女部屋へ。
「……」
 あのまま部屋に戻っていたらついてきてくれたかしら、お宝のことを忘れて。
 私とどちらが大切なの? なんてこと訊くような年でもないけれど。
 でも、そうね、ナミが言いかけていたこと……吝かではないの、それで喜んでくれるのであれば。
 好きな人の気を引きたい気持ちなら、今だって持っているもの。



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