夜闇に輝く上弦の月。その白い光が、先程降った雨で濡れた草をキラキラと映し出している。
そこを歩く二つの影。今は午前0時を丁度回った頃だ。
「おい、もしバレたら大変なk・・・ん」
影が一つに重なった。
今は夜のデートの真っ最中だったのだ。確かにもし、見つかったのなら罰則や大量の減点もあるかもしれない。
「セブルスは、」
僕と一緒にいたくないって言うのかい・・・?
互いの唇が離れた後、桜は悲しげに眉を寄せて恋人に問うた。
「ち、ちがっ・・・」
「なら、少しでも君と一緒にいたいんだよ。好きだから。」
はっきりと言われた言葉にセブルスは、青白い頬をほんのり赤く染めて彼を見た。
「でも、部屋は・・・一緒だろ?」
「二人きりだよ。部屋にいたら、別の子がいるだろう。」
桜は未だに規則を侵すことにビクビクとしている恋人を抱き寄せた。
「ぼ、くも、お前と、一緒に、いたい。」
温もりに擦り寄る。いくら暖かくなってきたとはいえ、夜が冷えるのは冬と変わらないのだ。
「ちょっと、出掛けようか。」
桜が杖を上げ、呼び寄せ呪文で箒を手に持った。彼はセブルスを離し、手を前に出す。
「お手をどうぞ、僕の可愛いプリンス。」
セブルスは遠慮がちに手を取った。
「ちゃんと掴まっててくれよ。」
「あ、ああ。」
二人で箒に跨がって、ゆっくりと上昇し、城の屋根程まで上がった。
「大丈夫かい?箒は苦手なんだろう?」
「・・・・・・たまには、良いかもしれないな。」
「でも、僕以外のに乗らないでよ・・・?」
セブルスはこくりと頷いて、自分より広い背中にしがみついた。
「セブルス、寒くはないかい?」
「大丈夫だ、桜は?・・・くしゅんっ」
「大丈夫じゃないだろ。そろそろ戻るかい?」
ゆっくりと飛んでいたが、予想以上に時間は過ぎていたらしい。しかし、セブルスはいやいやするように首を振る。
「ならまた明日も、こうしてまたここに来よう。ね、セブルス。」
「・・・。」
「もし、風邪を引いたら明日はここに来られない。どうしたい?僕は君の嫌がることはしたくないからさ。」
屋根の上に降り立って、問い掛ける。桜は、セブルスの頬をスルリと撫でてから微笑んだ。
「・・・わかった。また明日も、来たい。」
「うん、また明日、来よう。」
二人でもう一度箒に乗って夜の闇に飛び出した。