【※】日和天使病末期













呻き声が聞こえ、マリアは目を覚ました。
頭を上げると、日和が寝返りを打ちながら苦しそうに嗚咽を漏らしていた。
体を動かした際に羽が剥がれたせいだろうか、ブラウスは赤く血が滲んでいる。
「日和…」
マリアはギュッと日和の手を両手で握った。
こんな事をしても、日和の苦しみが紛れることはないと分かっていたが、
目の前で苦しむ日和を放っておく事ができなかった。
天使病が進み、既に羽が全身へと広がってしまった日和はもう何日も目を覚ましていなかった。
しかし、マリアは待ち続けた。
彼に一番近い場所で。
「日和…目を覚ましてよ」
何日待ったことだろう。何ヶ月、いや、何年だろうか。
実質そんなに経っていないのだろうが、
暗い部屋でひたすら日和の目覚めを待ち続けているマリアには永遠の時間に思えた。
「いつまで私を待たせるつもり…?日和」
マリアの瞳にはまた涙が溢れてくる。
「私を独り占めしたいのね、だから起きてくれないんでしょう…?
私はあなたがどんな姿になったとしても傍に居るつもりなのよ、日和」
どうして人の為に自らを犠牲にし、誰よりも自らを戒めてきた日和が、
主に忠実であった日和がこんなにも苦しめられ無ければならないのか。
エフレム神父はこれが天啓を受けてきた者たちへの祝福だと言った。
そしてその後には永遠の楽園が待っているとも。
「こんなのが…、こんなものが祝福なわけが無い…そうよね、日和?」
マリアの目には狂気の光が映り始めていた。
「そうよ…私の居ない永遠の楽園で、日和が幸せを感じることはないわ。そうよね?
私は、貴方のいない永遠の楽園なんかより、貴方の居る地獄の方が、幸せだと思うわ。
…ねぇ日和、私待つのはもう疲れちゃった…」
マリアは自らに語りかけるように呟くと、何処からか取り出された鋭いナイフを握り締め、横たわる日和へと近づいた。
マリアの狂気を感じ取ったのだろうか、周囲の空気がいつの間にか暗く重いものになる。
「一緒に行きましょう?二人の楽園へ…」
そして、あくまで当たり前のように、その行動が当然であるかのように
自然な動きで、ナイフは日和の首へと差し込まれた。
鮮血が噴出し、マリアの顔や髪に降り注いだ。
しかしマリアは笑顔だった。とても優しく、聖母のような笑顔。
「日和─私もすぐに行くからね」














--------------------------------------------------------------------------




序盤でこそ何だコイツは!と思いましたが、日和はマリア大好きちゃんでしたね。
傍に居て〜だの、とにかく可愛くて…その分天使病の部分はショッキングでした。
日和が救われる道はないのかなぁ…(´ω`)









TOP



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -