【※】バルビナ祭時の妄想






今夜は満月。マリアは自室の窓際にもたれ掛かり月を眺めながら、
心はいつもより少し浮き足立っていた。
するといきなり後ろから髪を引っ張られる。
「おいマリア...絶対あいつら胡散臭いぞ」
ウリエルだ。
「ちょっと...無闇に人を疑うのは失礼よ」
だからお前は甘いんだよ、と言い返されるが無視する。
マリアは昼間の聖バルビナ祭の際に、普通科の男子生徒に今夜集まらないかと誘われていたのだ。
とても紳士的な生徒だったというのに、ウリエルは疑って止まない。
「なぜ男の部屋へ行く」
「女の子も来るって言ってたじゃない!」
なかなか友達などできる環境にいなかった為、友好的に接してきてくれたことが嬉しかったのかもしれない。
(女の子の友達...出来るといいな)
そんな軽い気持ちでマリアは普通科生徒の寮へ向かった。



「マリアちゃ〜ん!来てくれたんだね」
昼間に気さくに話し掛けてくれた男子生徒二人が部屋で待ったいた。
外部の人間に絡まれてしまい、困っていたマリアを助けてくれた二人だ。
「女の子はねー、ちょっと遅れるってさ。ささ、そんなとこ立ってないで座って座って〜」
エクソシスト科ということで敬遠されているマリアを気遣い、
普通科の女子に紹介してくれるとの事だった。
「あら、そうなの...。お邪魔するわね」
───第一印象が大事なのよね。
マリアは笑顔を心がけながら、部屋へ入り椅子に腰掛けた。
「ココア、好きかな?入れたから飲んでね」
「あ、ありがとう」
しばらく三人で話したが、話すことが得意でないので居心地がいいとは言えなかったが、
2人が話題を降ってくれるので楽しいと感じた。
「女の子…遅いわね。」
ココアを飲み終わった頃、私は時計を見て言った。
不信感が心に芽生える。
「はは、そうだね…」
男子生徒は不敵に笑った。
「素直で可愛いねー、マリアちゃんは。なーんにも知らなそうだ」
「俺らが教えてあげないとなぁ?」
二人の雰囲気がガラリと変わる。
───え?
まずいと思った時には体がグラリと揺れ、動けなかった。激しい眠気だ。
───まさか、盛られた…?
(だから言っただろ、怪しいってよ)
それまで静かだったウリエルの声が聞こえた。
───ウリエルーーー。
その声を最後に、私の意識は闇へ落ちていった。



目覚めた時には私は自室にいた。
頭がガンガンと痛い。まるで何日も寝ていたような感覚だ。
「私、どうしたんだっけ…」
ふと、思い出したくない記憶が頭を巡る。
───!!!
そんな…と体から血の気が引く気がした。
「わ、わたし…まさか…」
あの後何があったのかを思い出そうとしても全く思い出せない。
「ウリエルは…」
見回してもウリエルはいない。
私はベットから飛び起き、ウリエルを探して歩いた。
「どこにいるのよ、もう…」
私はウリエルがいないという不安と、自分が犯してしまったかも知れない罪を恐れて震えた。
涙がこみ上げてくる。
「ほんとヴァカだな、お前」
はっと顔を上げるとウリエルが泣きじゃくる私を上から見据えていた。
そのまま私を抱え、部屋へ戻った。
「ウリエル、わたし…」
不安げにウリエルにあの後のことを聞こうとするが、うまく言えない。
「ヴァーカ」
おでこをピンッとはねられる。
「俺がいなかったらお前、今頃どうなってると思ってんだよ」
「ウリエル……!!!」
私はウリエルに抱きついた。
「ありがとう、ウリエル…ごめんなさい。貴方の言うこと、ちゃんと聞かなかったから…」
「ほんとはぶっ殺してやろうと思ったけどよ…」
そう呟やかれた言葉に青ざめた。
「まさか…なにもしてないわよね?」
ウリエルがあの生徒を殺してしまっていたり…傷つけていたりしてはいけない。
「ヴァカ、お前あいつらに何されそうになってたか分かってんのか?
…まあ、お前がうるさそうだから、脅すだけにしといたがよ」
「ありがとう、ウリエル…」
「お前に友達も何も要らないだろう。余計な気を持つからこういう事になるんだ。
こんなアホな事続けてんなら、次はないからな」
ウリエルにそう叱られ、私はシュンとした。
しかしその通りであった。私たちの目的はひとつ。
「私、どうかしてたわ…。私にはウリエルしか必要じゃないもの」
「…そうだな」
本当にどうかしていた。聖バルビナ祭でのライブならなんやらで気が緩んでいたのかも知れない。
こんなんではウリエルに見限られてしまう。それこそ何よりも恐怖だ。
いつでも私を救ってくれるウリエル。
私もあなたを救って見せるわ。







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