不可思議な力の出現
わたしは基本、できることが何もないので食事の準備だけはお手伝いしている。働かざる者食うべからず、だ。当番制か何かのようでみんな入れ替わり立ち替わりするのだけど、今日はアーサーさんと青い髪のオールバックの人だ。女子いないのか、と思ったがわたしを女子計上している可能性に思い当たり抗議するのはやめた。
「痛っ!?」
「どうした?」
「ナイフで指切った…」
うわ、言わんこっちゃない。どうやら指を切ったのはアーサーさんらしい。
「大丈夫ですか?」
うわぁ結構血が出てる。というか、どういう使い方をしたら両方の指を切るなんて器用な真似ができるのかさっぱり分からないわけだけど。
「ラナ呼んでこようか?」
「いや、さすがにそれは悪いだろ。そのうち止まると思うけど」
絆創膏的なものはないんだっけ。あ、そういえば。
「あの、ちょっと手を貸してもらっていいですか?」
「ん?はい、どうぞ」
「うろ覚えの知識なんですけど、こうやって心臓より高い位置でぎゅっと握っとくと血が止まりやすいって聞いたことがあって…」
どこの誰に聞いたかは覚えてないけれど、割とメジャーで誰でも知ってそうな話だ。
「へぇ…すごいな。もう痛くないや」
いや、痛みは取れないと思うけど。なんて気軽に突っ込めるわけもなく、とりあえず止血できているか確認する。
「あれ?もう治ってる…」
え、自己治癒力高過ぎじゃない?
「いや、違うな…君も魔法が使えるのかい?だとしても、杖を使わずに傷を治すなんて聞いたことがないな…」
「彼女の力なのか?」
「だろうな。精霊の力を借りた風じゃないし…レスター、悪いけどあと任せる。俺はなまえと一緒にこのことを報告に行くから」
そうだ、この青髪の人はレスターさんだった。って、そんなことよりなんか大事になってない?
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