合同企画 | ナノ

トランクス


時計の針がちょうど真上を差し掛かった時。デスクにあるその電話は鳴った。ディスプレイには『なまえ携帯』と綴られている。
社長室で山積みになっている書類を一枚一枚、丁寧に目を通していたトランクスは、なまえに何かあったのだろうかと不安にかられ、恐る恐る受話器を取る。


「あれ?意外と出るの早かったね」


予想外!と言いたげな柔らかい声は、トランクスにとって聞き慣れた声で。その声を聞いたトランクスはほっと息をつく。


「なまえ、こんな時間にどうしたんだよ?今日は遅くなるって言っただろ?それとも何かあったのか?」


トランクスは書類をぱらぱら捲りながら少し強めの口調で尋ねる。


「えー、何その言い方」
「今ちょっと忙しいんだよ。で、何かあったの?父さんまだ起きてるだろ?寝てるようなら悪いけど起こして、」
「ちょ、ちょっと待って!別に何かあったとかじゃないんだけどね、うん。というか寝ているベジータさんを起こすなんて私には無理!それってもう罰ゲームか何かだよね…てか、トランクスくん今一人?」


歯切れ悪そうに尋ねてくるなまえを不思議に思いつつ、トランクスは受話器を左手に持ちかえながら「そうだよ」と頷く。


「あのね……トランクスくん…」
「なに?」
「えっと、」
「うん。どうしたの?」
「その…」


なかなかなまえが先を言いださないため、トランクスはまた再び書類に目を通し始めた。


「お誕生日おめでとう、トランクスくん」


その言葉にトランクスは思わず書類を落としそうになる。それからすぐにカレンダーを、そして時計を見た。最愛の彼女から送られた自分の誕生日を祝う言葉。
ああ、覚えてくれていたのかと、トランクスは嬉しい気持ちでいっぱいになった。


「ありがとう、なまえ。凄く嬉しいよ!!」


一拍遅れてからトランクスは声を漏らす。それからなまえには見えていないにも関わらず満足げにコクリと頷いた。


「この所ずっと仕事が忙しくて会社に軟禁状態だったから誕生日のことなんて頭になかった」


もうそんな日だったんだ、と、トランクスは再びカレンダーに視線を向ける。


「ねえ、なまえ?」
「んー?」
「俺の誕生日を一番に祝ってくれてありがとう」
「どう致しまして!」
「今日はもう家に帰るよ」
「本当に!?」
「うん。俺の誕生日を一番に祝ってくれたなまえにお礼しなきゃ!」
「…え?おれい?」
「そ!今日はたくさん仲良し、」
「ちょ、し、知らない!おやすみ!!」


ぷっつーん…!ツゥーツゥー……。と騒がしい音をたてながら電話はぷつりと切れた。トランクスはにっこり笑った後 、どこか満足気な表情で受話器を置き静かに席を立った。

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