(木黒♀で執事とお嬢様のパラレルの甘々)



 頭を撫でる大きな手が好きだった。ひたすらに温かい大きな手のひらが、黒子の猫のように柔らかい髪の毛をくしゃくしゃとかきまぜる。ふつう、人にそんなことをされると腹立たしくなるものだけれど、彼にされるとうれしくてたまらなくなった。その手のひらは黒子に、優しさと温もりと安心を与えてくれる。小さな頃から慣れ親しんだ手だ。うつらうつらと、ふわふわのベッドの中でまどろみながら、黒子は夢うつつで近くに控える執事の名を呼んだ。

「木吉さん……」
「ん? どうしたお嬢様、眠れない?」

 ホットミルクでも作ってこようか、と木吉が離れていきそうになるのを黒子は慌てて引き止める。執事服の黒いズボンを控えめにきゅっと掴むと、不思議そうな顔で振り向かれた。

「そうされると、厨房に行けないんだがな……」

 困ったように太い眉が下がる仕草が、黒子は好きだった。彼のそういう顔からは、何となく人柄が見える気がするのだ。黒子の周りには喧しいのから静かなのからよく分からないのまでたくさんの執事がいるけれど、優しくておっとりとした雰囲気は木吉だけのものだった。それに惹かれて、気が付けばこんなに近くに寄せるようになってしまった。ここまで心を許したのは、今までで木吉だけだ。
 特別扱いしている、という自覚を、黒子はちゃんと持っている。困らせるのはこの人だけと決めていた。それを他の執事はやっかんでああだこうだと言うけれど、それさえ気にならないほどに、この人のことが、好きなのだ。

「もうちょっとそばにいてください」
「いいけど、ミルクは?」
「いいんです、それはいいので、もう一回、よしよししてくれませんか……?」

 その言葉に、ふわっと微笑んだ木吉はベッドのそばに舞い戻り、先ほどのようにしゃがみこんだ。それから黒子の水色頭に手を置いて、髪の毛をくしゃくしゃと混ぜる。
 その心地よさから、いい夢が見られそうだ、と思った。

「おやすみ……テツナ、お嬢様」

 耳朶を打つその声は甘い。ミルクをたっぷり与えられたような子猫のようにアイスブルーの瞳を細めて、黒子は深い眠りに落ちていった。



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大変遅くなってしまい申し訳ありません。そして甘々の執事×お嬢様という素敵設定を活かせずにす、すみませ…!!少しでも萌えの足しになっていれば幸いです。
BOBOさん、リクエストありがとうございました!



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