ワルツは終わらない(waltz/エリアス)


「あ、エリアス教官!」
「ああ、君か。こんばんは」
「こんばんは。あと、あけましておめでとうございます!」
「え、もうそんな時間か?」
「年が明けて、もう三十分は経ってますよ」

 私の言葉に時計を見たエリアス教官は、気付かなかったなと小さく笑ってみせる。私は新年早々エリアス教官に会えるなんてラッキーだなぁと内心呟きながら、にこにこと彼の顔を眺めた。
 私はこの、強く美しい教官が好きだ。誰よりも優しい、生徒からの信頼も厚いエリアス教官。貴方に会えなくなるのが嫌で冬期休暇も家に帰らなかった、なんて言ったら、この人はどんな顔をするのだろう。

「教官はお仕事してたんですか?」
「新年の授業の準備を少しね。君はどうしてこんな時間まで?」
「男子がうるさくて・・・・・・」
「え?」
「えっ、知らないんですか教官。年越しの夜はみんな庭でパーティーしてるんですよ。・・・・・・まぁ女子は私しか残ってないから、行きづらくて行ってないんですけど」
「ああ、そうだったのか。道理で外が騒がしいと思った」

 ぱちりと目を瞬いたエリアス教官は、その視線を窓の外に遣る。ここからはそのパーティーの様子が良く見えた。男子が数十人、街で買ってきたご飯を広げて騒いでいる。エリアス教官の目が優しく細められた。

「・・・・・・なかなか楽しそうだな。レオニダス教官に見つからないといいが」
「見逃してくれるんですか?」
「新年の祝いだから、少しぐらいは・・・・・・ああでも、君の安眠を妨害してるのか」
「いえ、まぁ寝れなくはない、と思うんですけど・・・・・・」

 うるさいと感じたというより、羨ましいという気持ちが勝ったというのが本音だ。盛り上がる声を聞きながら一人で寝るのが寂しかっただけで。
 何と言ったらいいものかと私がおろおろしていると、エリアス教官が思案するようにゆるりと首を傾げた。

「・・・・・・よし、じゃあ私の部屋へ来なさい」
「、えっ!?」
「温かい飲み物でも淹れよう。男子だけ盛り上がって、君が一人寂しい思いをするのは不公平だからね」
「え、あ、でも、あの・・・・・・」
「ああ、相手が私なのは我慢してくれると嬉しい」
「そっ、そんな!むしろありがたいです!!」

 勢い込んで言うと、エリアス教官が目を瞬いた。しまった。今のはちょっとこう、好意丸出しみたいな感じだったかも。ど、どうしよう。
 固まる私を余所に、エリアス教官はにこりと笑って「それなら良かった」と呟く。そして私の肩を促すように押して、歩き始めてしまった。優しく触れられただけなのに、身体中に電気が走ったような気がした。

 だって、わたし今エリアス教官と並んで歩いてる。

「あ、あの・・・・・・エリアス教官」
「ん?」
「・・・・・・いえ、なんでもないです」

 しあわせ、だなぁ。
 この光景を忘れまいとしっかりと彼の横顔を見つめていた、このときの私は知らない。
 この日を境に私とエリアス教官の夜中のお茶会が、週に一度の習慣になることを。


ワルツは終わらない


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