青が揺蕩う朝焼けの(hq/田中)


「アッ!!先輩!!」
「ひえっ」

 やけに元気な声が後ろから私を貫いて、驚いた私はうっかり手に握り締めていたスマートフォンを取り落しそうになった。
 どきどきする胸を押さえながら振り返ると、そこには声音から予想していた通り、目をきらきらと輝かせた坊主頭の彼の姿がある。ひい、めっちゃ見てる。顔が赤くなってないかな、なんて考えながら、私は彼に向かってにっこりと笑ってみせた。

「おはよう、龍之介君。ついでにあけましておめでとう」
「ッス!おはようございます!あけましておめでとうございます!」
「今年も元気だねぇ」
「アザーッス!!!」

 私に追いついた龍之介君が嬉しそうにはにかんだ。また心臓がどきどきする。ああほんと、今年も龍之介君はかっこいい、なぁ。
 ちらりと見上げた彼の背丈は、私と出会ったときよりずいぶんと伸びた。もうずっと見上げているのは疲れるぐらいに。これからまたバレーをいっぱいして、さらにかっこよくなるんだと思ったら、甘ったるい感情に支配されていた胸が、すこしだけ痛んだ。
 零れそうになったため息を飲み込むと、龍之介君がなんだか困った顔をしているのに気が付いた。目線だけでどうしたのと問いかけると、「あ、あの」

「・・・・・・い、いっしょに」
「ハイ」
「学校行ってもいっすか」
「いいけど・・・・・・?」
「ッ、あざす!」
「・・・・・・」

 かわいい顔しちゃって、ほんと。
 期待させてくれるよなぁと思う。私と一緒に学校に行くだけでこんなに嬉しそうな顔をする、なんて、勘違いしてしまいそうになるのに。二人で並んで歩くと、思ったよりも近い距離にまた顔が熱くなる。

「あの、先輩寒くないっスか」
「え?あ、あー・・・・・・さむい」
「マフラー忘れたんすか」
「忘れました!」

 じゃあ、あの。また口ごもった龍之介君に私は目を瞬く。彼がこんなふうにもにょもにょするときは、何か私に対して言いたいことがあるときだ。しかも、私が勘違いしそうになるタイプの。
 今度は何を言われるんだろうと身構えていると、急に視界が青く染まる。え、と音を零した私に、青の向こうで龍之介君が笑う気配がした。

「俺の使っていっすよ!!」
「え!?こ、これ」

 龍之介君のなの。

「先輩が風邪引いたら大変なんで・・・・・・」
「龍之介君は部活もあるんだし、龍之介君が巻いてたほうが・・・・・・ほら、頭も寒そうだし」
「おっといきなり辛辣に来ますね」
「冗談だよ。ねぇでもほんとにマフラーはいいって、私は髪の毛あるし・・・・・・」
「・・・・・・先輩が風邪引いたら俺が困るんで!」
「へ、」

 青いマフラーをかき分けて視線を上げると、そこには真っ赤な顔をした龍之介、くん、が。

「・・・・・・マフラー、いらなそうだね」
「・・・・・・ウス」

 まぁ私もいらないかもしれないけど。


青が揺蕩う朝焼けの


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