シャッフル! | ナノ




「そんな顔しないでくれよ。三年ぶりの再会だってのにさ」
「…どこかでお会いしましたっけ?あいにくと記憶にないんですよね」

つい昨日、箱庭学園を揺るがすニュースが飛び交った。人吉善吉が、黒神めだかに反旗を翻した、と。
それについて当然委員会連合としても反応せざるを得なくて、少しばかり会議が長引いてしまった。だからあとは最終下校時刻を過ぎるまでにこの学校を去るだけなのだが…どうにも、そうはいかなそうである。
目の前には巫女装束を着た、白髪の若い女。片方の手を螺子で拘束されているその姿は痛々しかったが本人は痛覚を全く感じていないようである。まあ、晴日にとってはどうでもいい取るに足らないことだ。
その後ろに背の高い男が後ろを向いて控えているのも、きっとそう。

「この姿で会うのは初めてだよ。でも、そんな小さなことを気にするほど君は神経質だったかな?」
「いいえとんでもない」
「流石話が速くて助かるよ。単刀直入に言うとさ、僕は君を悪平等<なかま>に誘いに来たんだ、三年ぶりにね。何せ悪平等<ノットイコール>は僕と彼しかいなくてね。寂しいことこの上ないよ」
「はあ。過負荷<マイナス>の次は悪平等<ノットイコール>ですか。今年は本当にニュースに事欠かないですね。新たな敵ってやつですか?生憎と私は箱庭学園委員会連合美化委員会副委員長を務めていまして。日常を守るという仕事があるんです」

「なあに。その片手間にできることさ。未経験者、Wワーク大歓迎、誰でも簡単に覚えられるお仕事☆ってやつだぜ。いやなに、僕はフラスコ計画を成功させたい奴の一人なんだけどさ?そのためにひとまず人吉善吉君をめだかちゃんに勝たせたいんだ。このままじゃいろいろ都合悪くってさー」
「そうですか。まあ、日常を守ることと変化をしないことはイコールじゃないですしね。現に私の友達だって大胆な改革をしてますし」

今日も今日とて正義を執行する小さな彼と、誰も知らないけれど、誰も傷つけずに選挙を変えた、彼。

「そうそう。それに僕は平和主義者だから少年ジャンプみたいに何でもかんでもバトれば解決するなんて思ってない。平和的に民主主義にのっとって彼女を引きずり降ろすつもりさ」
「そうですか。まあ、私にも選挙権はある訳だし、平和を脅かさない限りはアナタ達の仲間になったって何の問題もないわけですか」


断る理由はない。なら、入ってもいいだろう。もともと黒神ちゃん側の人間でもない。メリットなんてなくったって。わたしをひつようとしてるんだから。
でも、うんっていえない。どうしてだろう。

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