シャッフル! | ナノ




特待生十三組(チームトクタイジュウサン)。
人体では到底不可能なことをやってのける天才中の天才集団。
登校義務さえ免除された優秀な生徒たち―――とだけ言えば聞こえは良いかもしれない。
しかしその実態は問題児の集まり。異端中の異端集団。
加えて、他生徒との優遇の差。
十三組を除く生徒達からすれば謎で、不気味で、納得がいかない。
少数派を切り離しにかかる集団において特待生――特に十三組は、格好の『マト』であった。
それでも今日までギリギリの均衡を維持できていたのは、ひとえに語り継がれる常軌を逸した姿と、彼らがほとんど人前に姿を現さなかったから、と言える。

そう、マトが不明瞭だったからなのである。





「風紀委員…?」

節度ある喧騒に包まれた昼休みの教室にて。
かじったパンを咀嚼しながら晴日は聞き返した。

「そう。今年飛び級で入った晴日ちゃんの元クラスメートが片っ端から校則違反者をシメて、委員会も改革してるみたいよ。理事会にも顔が利くとかで。人呼んで、モンスターチャイルド」
「ふーん…」

噂好きの女の子らしい実にありふれた会話と言えよう。しかし、話を持ってきた廻栖野うずめは噂が好き、というよりはこのテの話が好きなのだ。
彼女は嫉妬や羨望を最小限に徐々に頭角を現し始めた、新進気鋭の"魔女"である。

「ウチの学校、その辺はゆるゆるだったから少しは平和になってくれるといいんだけど…」
「自主性に任せすぎが否めないからね」

入学して2ヶ月が過ぎたが、実際にこの学園を取り仕切る仕事の何%を教職員がしているのかと思わず聞きたくなる。

「晴日ちゃんには悪いけど、十三組には気をつけないとね」
「…この間会った人は丁寧でいい人だったと思うよ」
「どんな人?」
「選管だって言ってかな」
「へえ………」

と、向かいから誰かが歩いてくる足音を聞いて、廻栖野は話を中断した。晴日は振り返る。

「あら、邪魔しちゃった?ごめんなさいね」

白を基調とした制服を纏い、星の入った腕章をつけたクラスメートの呼子笛は、軽く会釈をして教室を出て行った。
その際に、くすり、と横目で見ながら笑われたことを晴日は確信していた。それがどういう意味なのか―――分かってしまう晴日は、しばらく彼女の出て行った扉を見つめていた。

「廻栖野ちゃん。十三組にも気をつけないといけないけれど、反発する人もいるだろうから、あんまり大々的に委員会活動しないほうがいいかもね。連合全体が火の粉かぶっちゃうよ、きっと」
「……そうね。先輩の耳にも入ってるだろうから、少し相談するわ」
「うん。そうしようか」

少し清掃を休むことになりそうだ、と晴日は割烹着の裾を握りしめた。


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