シャッフル! | ナノ




今日も今日とて彼は公平で彼女は広量である。



選挙管理委員会副委員長、長者原融通は広大な図書室にて文献を読みあさっていた。
無論、過負荷球磨川禊によって生じた生徒会リコールによる戦挙での対決方法を決めるためだ。
黄ばんだ紙をめくる音だけがこだまする巨大な図書室に、晴日は姿を現した。

「…春日様。今は夏休みでして、なにも貴方まで学校にお越しいただく必要はないのですが」
「そんな事言わないでよ。私はアナタの事を、どこまでも公平であろうとする貴方の事を、ワタシは信頼しているんだけどね」

どこまでも"公平"であろうとする彼だから、きっとライオンと蟻を真剣に戦わせるようなそんなルールを考え出せるんだろう。

「はあ…。わたくしめを信頼していただいているのは大変恐縮ですが…。そのような大層なものではございませんよ」
「そう。まあ、そうだよね。仕事熱心なのは結構だけど、自己管理能力は必要だと思うよ」

この三日間、貴方はどれくらい食事をとって、どれくらい寝たのかなあ?と聞くと返ってきたのは謝罪の言葉だった。

「すみません。どうにも、熱中してしまいまして…」
「どうして謝るかな?別に、悪いことをした訳じゃないのに」
思わず笑みがこぼれた。
あの、公平で――無慈悲で冷徹とも言える彼が。申し訳なさそうに頭を垂れてその手を止めたからだ。

「しかし大刀洗さんの言ったとおり、長者原くんは意外と面倒くさがりなのかな?」
「大刀洗委員長が…ですか?」

長者原は、この件に関して無介入を貫くから後はよろしくと仕事を丸投げした先輩を思い浮かべているのか、少し怪訝な顔をしている。

「うん。あの人も今、たちの悪いストーカー被害にあっているらしくて。大変みたい」
「聞き及んでおりませんが、そうなのでございますか?」
「んー、私も直接現場を見たわけじゃないんだけど。まあアナタも彼女を見習って休めばいいんじゃないかな」

そう言って取り出したのは米良や飯塚に教えてもらった夏バテ防止の食材やレシピで作ったお弁当だった。
長者原は観念したのか、ぱたんと表紙を閉じた。
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