シャッフル! | ナノ




それは梅雨前線の力で雨の降り注ぐ梅雨の頃のこと。
箱庭学園の学生食堂のキッチンにて事件は起こった。

カサカサ…

その場に置いて明らかに異様であるが小さすぎて常人には聞き取ることができないほどの音。
しかし箱庭学園食育委員長の片割れ、通称猟理人――飯塚食人の鋭敏な耳はそれを聞き取った。
もしや、と思いだん!と足音で威嚇する。するとそれは、予想したとおりに飛び出した。
予想外だったのは黒光りするそれの質量と、素早さと、食堂の方へ飛んでいくという行動だった。

「しまった…っ」

「「「きゃあああああー!!」」」

そしてそれに続く悲鳴に血相を変えて調理室に戻ってきた米良に、飯塚が叱られたのは言うまでもない。





「悪の皇帝Gが…!?」
「そうなの。私たち美化委員会最大の敵である奴らが私たちの預かり知らぬうちに根を張り、そしてまさに今!一斉攻撃を仕掛けてきたのよ!」

ゲームの話だろうか、と阿久根は思った。明らかにクソゲー臭しか漂ってないが。
しかもそれを話していたのがかの美化委員長だったので、女の子は空想が好きだしな、の一言で片付けられてしまった。
そして横で聞いている…異常にして特別に十組に所属している春日晴日があまりにも大事件だという顔と反応をしていたので美化委員会はそろってそうなのか、と納得してしまった。
この時阿久根がこの話に食いついていれば、
あるいは背後を横切った不穏な物体に気がついていれば、

何かが変わっていたのかもしれないが、それはもう神のみぞ知ることとなってしまった。

「全美化委員を召集するわよ。一刻も早く何とかしないと…かつてない被害がでるわ」
「うん、分かってるよ。リミットがきてしまう前に、ケリを付けないと…大変な事になる」

美化委員長廻栖野うずめはトレードマークである魔女の帽子を深くかぶり直し、大きな藁箒を、
副委員長春日晴日は相棒のはたき、細雪を、それぞれ構えた。


「「大掃除(全面戦争)だっ!」」

梅雨の鬱蒼とした空にこだました宣言を持って、箱庭学園全体を巻き込んだ戦争が、幕を開けた。

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