dream | ナノ


もう丸2日、彼とメールしていない。
2日くらい、と思う人もいるかもしれない。いやおそらく大半の人がそう思うという気がするのだけれど。

彼――佐々木異三郎においては、この事態はひどく異常だった。
ケータイ依存症の彼は暇さえあれば五分と開けずにメールを送ってくるのに。
どのくらい異常かっていうと銀時が激辛煎餅にマヨネーズつけて輝いた目でむさぼり食うぐらいには、異常。

「で?なにしにきたんだよ。こっちだってなあ、いろいろあんだよ。これからパチンコいったりパチンコいったりパチン…」
「だから!メールが来ないの!!あの!!!佐々木異三郎から!!!!」
「…あのさ、智香ちゃん。銀さんの話聞いてた?」

どうせパチンコしかしねーんだろうが。
銀時はいつもの死んだような目で私を見ながら新八くんのいれてくれたお茶を啜った。

「んなもん、本人に直接会いに行けばいーじゃねーか」

銀時は何気なーくいつも通りに投げやりに言ったのが見て取れた。でも、

「あ」
「バカ?バカなの?いや昔から知ってたけども」
「な、何かあったのかもしれないし…」
「なおさら行きゃいーじゃねーか」

うわああああ!!!
失 念 し て た !
メールが来ない事実に焦りすぎてそんな初歩的なことに…
正直ものすごく恥ずかしい。

「…ありがとう銀時。行ってくる……ってなにこれヘルメット?」
「俺はパチンコいくだけだ。たまたま官庁近くに新しい店できたから、玉の出具合見にな」
「ありがとう銀時ィィ!」
「うわっ!ひっつくんじゃねーよ」
「いーじゃん!昔はヅラも一緒にお風呂…」
「ごめんなんか急性の中耳炎が」

相変わらず都合のいい耳してんね。
しかし持つべき物は友!
そうとなったらいざ見廻組へレッツラゴ…


『〜♪〜〜〜♪』

「なにさこんな時に電話なんて!」
「いや、早く出てやれよ」
「あれ、ケータイどこだっけ」

カバンの中を探すけどなかなかケータイが見つからない。なのに、コールは切れない。
ゴソゴソゴソゴソかき回す…やっとみつけた!
そのディスプレイに表示されていた名前は―――

「佐々木、異三郎――?」
「え、まじかよ」
「も、ももも、もひもしっ」

私は慌てて通話ボタンを押した。

『もしもしサブちゃんですけど』
私は声がどもってひっくり返ったのに。びっくりするくらいに彼はいつも通りだった。

「ど、どーしたの?今まで連絡無かったから心配して…」
『仕事中にケータイが壊れまして。ショップに行く暇がなかったものですから』

何でもないようにそう言った。
いや、実際に何でもなかったんだけど。

「そっか、良かった…」
『良くありません』
「は?」
『今貴女の家の前なんですが…。どこにいるんです』
「え、えーと…」

まさか元攘夷志士白夜叉宅とは口が裂けても言えな…。

『どうせ白夜叉の所なんでしょう』
「あははー…」
お見通し、ですか。さすがエリートだねコンチキショー。

『もし私の仕事が彼の抹殺だったらどうするんですか』
「え」
『冗談です』
「…笑えないんでもうちょっと分かりやすくお願いします」
この人のいつものブラックじみたジョークは本当に笑えない。
しかも真顔のまま言うもんだから反応に困る。

しばし、妙な沈黙が続いた。

『……白夜叉に襲われないうちに帰ってきなさい』
「え!?ちょ、ちょっと異三郎さん!?」

そこで一方的に電話は切れた。
…もしかして、分かりやすく言ってくれたんだろうか。
というか、あれはブラックジョークでもなんでもない。
私が心配だったように、彼もまた
私を心配してくれたのだろうか。
いや、心配というよりもっと子供じみた……

パチンとケータイを閉じた。
振り返るとそこには思いっきりにやついた銀時がいて。

「…お騒がせしましたー」
「おーおー。痴話喧嘩ならよそでやってくれ。イサブローサンとやらとな」

そう言われて、銀時に完全にバレているらしいことに気づいた。
私は顔の熱に任せるままだからモテねーんだよ天パ!と叫んで万屋を飛び出した。

独占欲
(もしかして妬いてた?…まさかね)


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あり得ないぐらい銀さんが偽物で申し訳ない限りです。
じつは前作世界はとても曖昧だの続きっぽい物です。


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