「メールもいいけどたまには顔見せてよね」
と彼女は少しむくれて言う。
感情表現が決して豊かとは言えないが時折姿を覗かせるそれはひどく子供じみていて愛らしい。そんなことを言ったら怒るだろうから口には出さない。
否、出せないのだろうか
「あと、今会ってるのはケータイなの?」
「いえ、智香さんです」
「じゃあ、いい加減それ離しなさい」
「仕方ないですね」
パタンとケータイを閉じれば満足げに口角が少しだけ上がる。
彼女を良く知らなければ見過ごしてしまいそうなほど、少しだけ。
拙いなりの感情表現は自分には眩しすぎる。いつのまにか仮面が素顔になり代わってしまった私にはできないからだ。
歯の浮くような台詞を言えないわけではないが、それでは本心でぶつかってくれる智香はどうなるのか…。
そう思うからこそ少しだけ素直になろうと決心できる。
「あれ?メール…」
「誰からでしょうね」
彼女がケータイを開いて中身を確認するまであと10秒。
「あのね…っ、目の前にいるんだから、直接、口で、言ってよねっ…」
ありのままの自分になれるまでは、まだ分からない。
いっそ単細胞になりたい
(エリートも楽じゃない)
(嬉しくなんかないからっ)
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title by 意味様
究極に不器用なサブちゃんもアリなんじゃないの?と思い立って書きました。
家柄とか立場とかの重圧で素直になれなくなってたらなーとか。
送られたメールになんて書いてあったかはご想像にお任せいたします(笑)