dream | ナノ


「む、無理です…。ダンスなんて踊れませんよ…!!」
「良いんですよ。私が合わせますから」
「あわせて貰うためのダンスが分からないんです!副長じゃダメなんですか!?」

局長室に書類を届けに来た際に、何でもなく『パーティーに出席しろ、ダンスパートナーとして(要訳)』と言われてしまった不幸な見廻組隊士宝生智香はちぎれんばかりに首を横に振り倒していた。
佐々木も元より一筋縄で行かないことは承知の上だったがここまで頑なに拒否されるのは想定外で、もはや引っ込みがつかなくなってしまっている。

「形式なんて無くて構いません。ダンスで大事なのは相性と相手への気づかいです」

どれだけ佐々木がフォローしようと後込みする智香に、佐々木は強めの語調でそう告げる。
するととたんに、ぴた、と彼女の動きが止まった。効果あったか、と佐々木は安堵のため息をついた。


「…!!それは、本当に駄目じゃないですか。主に最後、局長が」


「撃たれたいんですか?」


しかしそう上手くは行かなかった。相手は宝生智香。
予想の斜め上を飛び越えられて、思わず懐の相棒に手を伸ばす。

「いいいいい、いえ!」

ぶんぶんぶん!!
佐々木の努力むなしく頭のちぎれそうな首振り、再開。
しかしもう後幾ばくもしないうちに彼女は落ちるだろう。逆らってはいるものの素直で従順で、とても愛おしい。

それでもなお、ダンス踊れなくて局長に迷惑かけるのは嫌です…。としょげる智香に、佐々木は言うつもりが無かった言葉を口にすることを決めた。


「ああ、最後に。のぶめさんではなく、貴方を選んだのは、貴方と踊りたいと思ったからです」

「…ん?」

「見せつける良い機会じゃないですか」

「…んんんんん!?」


「何をぼーっとしてるんですか。ドレスを見繕いに行きますよ」


ぷい、と顔を背けて、佐々木は智香の方を確認することなく歩き出した。
いつもより少しだけ歩幅が長い。
すたすたすたすたと。
小気味よく歩いていく。

「ええええええ!?き、局長!今のどういう意味ですかあああ!?」


その後をちょこちょこと追いかける智香の顔が何色をしているかも確認しないままに。




(めちゃくちゃなステップでも、局長とならそれもいいと思える私は重症のようです)


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title byカカリア様

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