dream | ナノ


いわゆる私は夜の仕事というやつで。

ここ、歓楽街のかぶき町でそんなことを言えばよくてキャバ嬢、悪けりゃソープ嬢なんかだととらえられるだろう。
しかし、それほど欲にまみれてはいないがもっと血なまぐさい仕事である。
それはともかくとして、夕焼けの下茶屋にて私は彼と団子を食べていた。

「あれ?佐々木さん怪我したの?珍しいね」
「智香さんこそ。どうしたんです?」

そしてお互いの手に巻かれた包帯を目にして、笑う。
まだ白くて真新しいそれは、まだその傷も真新しいのだと言っているようだった。

「質問は自分が答えてからね!」
「…ねずみにやられました」
「そうなんだ。私はキツネかな。仕事大変そうだね」
「いえいえ。エリートですからこれくらいはなんてことありませんよ。智香さんは何のお仕事をされていましたっけ」

「…えー?素敵な旅だちをお届けするスッチーさん、てとこかな?」
「そうですか」

気づいてるけど気づきたくないのよね。
だってまさか、私は彼が警察のトップだったとか知らなかったし。
彼だってきっと、私が忍びだなんて知らなかったわけで。

それに気づいた日からひっそり活動してたけど、もうバレちゃってるみたい。
まあ、この人だって怪しいことしてるから私みたいなのと鉢合わせするわけで。殺されなかったのが不思議だけど、別に問いつめるつもりでもないみたいだしまあいいか。

「ああ、もうこんな時間かあ、寂しいな。私そろそろ帰らなきゃ」
「ええ。お気をつけて。すぐに会えますよ。すぐに、ね」

街は夜の気配を染み出させている。
これから、仕事が始まるのだ。
今日の仕事が終わったら、納豆持ってってグチにつきあってもらおう。
辺りは既に陰の境目が無くなり始めていて。
街灯なんて気の利いた物がないから紅く暗く染まった佐々木さんの顔がよく見えない。

「それじゃまた、近いうちに」
「ええ」

空は黒く染まっていって、きっと今にこの血に塗れた空は溶け崩れてしまうのだ。

マシュマロクライシス

(甘い時間はおしまいだから、遠慮なく捕まえてみなよ)


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title by カカリア様

忍者ヒロインでした。
諜報というよりも暗殺者より。
仕事が終われば納豆好きな彼女と愚痴やらくだらない話に花を咲かせる予定。
佐々木さんは殺し合い寸前までいっても普通にしれっとしてたので。
こんなのもありじゃないのかと。

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