dream | ナノ


見廻組隊士
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眠い。
それが今の智香の頭の大半を占めていた。
仕事が終わらなくてほぼ徹夜なのだから当たり前だ。
「おはよーございます…。佐々木さん」
局長室の扉を開ける。
まぶたがとてつもなく重かった。佐々木が少しぼやけて見える。
「おはようございます。随分と眠そうですね」
「そういう佐々木さんも眠そうですよー。目ぇ半開きだし」
「これは生まれつきです。意識ははっきりしてますよ」
「嘘だ。だってフラフラしてますもん」
「フラフラしてるのは貴女です」

佐々木は前後左右に頭を揺らしている智香を可哀想なものを見る目で見ているが智香は気づけない。
「何故寝てないんです。そのままでは仕事に支障をきたすでしょう」
「なんで、って…」
今度はブルブルと震え出す。三歩下がればより一層挙動不審に見えるだろう。

「佐々木さんがあんな量の書類渡すからでしょう!終わる訳ないんですよ1日で!」
「そうですか?エリートなら1日もあれば十分ですよ。実際終わってるじゃないですか。
これ、今日の分です」

しれっと言ってのけて、しかもさり気なく昨日以上の量の書類を手渡された智香はその場で固まってしまった。
「無理です。確実に寝ます」
「でしたら、目を覚まさせてあげましょう」
「え、そんなことできるんですか」
「エリートですから」
エリート関係なくね?とつっこむ余裕は今の智香にはなく、おまけに判断力もないので顔をあげてくださいと言われるまま首を上に傾けた。

瞬間、
ふに、と柔らかいものが唇に触れて
それが同じく唇だと言うのに気づくのにだいぶ時間がかかった。

ゆっくりと離れていく唇。

キスをされたときに思考が追いつかなかった分後になって羞恥が雪崩のように押し寄せてきた。
妙に血の巡りの良い心臓と上がる体温。

「な、な、…っ」

余りのことに目を見開いて睨めば口の端を上げて得意げに笑う佐々木と目があった。
「目、覚めたでしょう?」
「狡猾、冷徹、鬼畜の才を兼ね備えた怪物が目の前にいる…」
「おや、覚めませんでしたか?なら次はもっと…」
「覚めた!覚めましたァァ!」
真っ赤な顔で失礼しました!と声を上げて、智香はバタバタと足音を立てるのも構わずに勢いよく駈けていった。

目覚まし時計

(私としたことが。嫌われてなければ良いのですが)
(もしかしなくても好きなのバレてる!?にしても狡い!)


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一歩間違えればセクハラだけど、お互いに好きである程度好意があるなって分かってるなら大丈夫だ、問題ない。

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