私は昔汚い女だった。
でも今だって、そんなに変わらない。
とある、落ち目の財閥が形勢を立て直そうと天人に協力を募った。
しかし世の中ギブアンドテイク。落ち目の財閥が天人の提供する最新技術に金を払えるはずもなく…結果として犯罪の片棒を担がされている。
佐々木さんの説明はそんな所だった。
(本当にひどい話…)
でも、私にゃ人のことは言えない。
私は、私ははじめ、見廻組の情報を得るためのスパイみたいなもんだったのだ。
あわよくば佐々木さんに一泡吹かせてやろうと、そんな風に。
でも…実際は…。自分の業務を無視して佐々木さんにばっか肩入れしてる。こっちに何のメリットも無いのに。
正義感?無いたぁ言わない。でも、それが全てと言える性格ではない。
なんて、ことだ。
背後でひそひそと隊士の話し声が聞こえる。いきなりこんな包帯だらけの格好で出勤したもんだから驚かせたんだろね。
しかし内容は案外下世話だった。
(…そのため息のうち一回くらいはあんたらに対してのもののような気がしないこともない…)
副長みたいに逐一注意するつもりはない。自分が集中すればすむ話だし。
…しかし、内容は下らないが、本当に、本心から私を心配してくれてる。
……………
……………………
―――私、みんなを裏切ってる。
視線を感じる度にそう思う。
私を信用して信頼して心配してくれてるみんなを、裏切ってる。
ふいにブブブ…とケータイが震えた。
盗聴器のことがあったので電話でのやり取りはしないかわりに全てをメールでやりとりすることになった。もちろん、記録が残っても問題ないようなものとそれ以外は軽い暗号だ。
ので、またメールでも着信がわかる設定にした。
…が。
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なんと今日マスドが100円セールだお(゚o゚)/
智香たんはなにがいいかな??
決まったらメールしてね☆
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……また意味のないメールを助長させる結果になってしまったことは否めない。頭痛くなってきた。
私は頭抱えながら『焼きドがたべてみたいです』と返してため息を吐いた。
直後神山の奇襲にあうことになるのだがまあそれは割愛させていただくとして。
私は変わった。
ただ、それが全ていい方向に向いてるかは別の話なのだ。