夢喰 | ナノ
33

「じゃあ、本当に2人は何も…」
必死の釈明の上誤解が解けて少しほっとした。

「ったりめーだ」
「ナイナイナイ(笑)副長ととか、ナイナイナイ(笑)」
「え、なにそれ。そんなにあからさまに否定されたら傷つくんだけど。なにその(笑)」
「え?そのまんまの意味ですけど?」
「やっぱ腹切れテメエェェ!」
「良かったっス!自分てっきり副長と宝生さんはただならぬ仲なのかと…」
「どこぞの瓶底眼鏡みたいな言動と反応止めてくんない。サイトの趣旨が変わりそうなんだってば」

声を上げながらしきりに副長の方をチラチラ見る鉄之助くんにそう言った。
マヨネーズの染み抜きをするために沖田くんが上着を脱いだ状態で洗面所にいる所を目撃されてあらぬ誤解を受けたこともあった。
勿論、どこぞの瓶底眼鏡にだ。
あれ?結局原因副長じゃないか?

「とにかく、午後からの見回り気合い入れとけよ」

副長は舌打ちをして去っていった。
そうだ。午後から見回りだった。鉄之助くんと。
うーん。今日も佐々木さんと食事するわけで。なんだか裏切ったような罪悪感が芽生える。

「あ、いいの?副長に用があったんじゃ…」
「いえ!大した用じゃなかったんで大丈夫っス!」
「そ。じゃあ私はお昼に行かしてもらうよ」

そう言って腰を上げて出て行こうとしたときだった。

「きょ、今日も兄貴の所ですか!」

振り絞るような声。
知られた、のか。

「偶然、官庁に使いに行ったときに…」
「あー…。知られるとややこしいから、黙っといてくれるかな」
「あの、失礼っスけど 兄貴とは…」
「………鉄之助くんが思ってるようなことはないよ、きっと」

答えることができなかった。
私自身答えがでてないのだから当然か。

「あのさ。鉄之助くんが思ってるほど、佐々木さんはあんたのこと嫌っちゃないよ」
「え…?」

キラキラした瞳に影が差す。
困ったような分からないような、怒りのような。

「でも、鉄之助くんが思ってるよりずっと…悪い人、かねェ」
「宝生さん…」

今度こそ曇ってしまった目。
きっと自分が経験した以上に最悪な想像が出来ないんだろう。

それでもこの世に、地獄はある。

その時だった。ケータイが鳴ったのは。
最近メールの受信件数が半端じゃないので、ついに電話しか鳴らないようにした。だから私のケータイが鳴るのは至極珍しい。
しかも、相手があのメール弁慶だなんて、明日は雪だろうか。


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神山さんは度々誤解して沖田に蹴られてるんじゃないですかね。
主に誤解というかその際の変態発言によって。
彼の実力がいかほどなのかちょっと気になります。

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