MAGI | ナノ
01 



私はジャーファル。

シンドリア政務官であり、シンドバッド王の腹心の部下でもある。


そんな私は、現在大きな危機に当たっている。

昨夜、繁盛期が無事に終わった事の安心感と数日に及ぶ徹夜のせいで定時を終えた時点で既にテイションがおかしかった。

だが、禁酒解禁だと騒いだシンドバッド王によって八人将全員出席した宴会が催された上に、シンが悪ノリして飲ませてきたのだ。

ゴブレットから零れる程の酒を何度も飲まされ、すっかり酔いが回ってしまった私は微かな理性が残されている内に自室のある紫獅塔へと向かった。


でも、それ以降は全く覚えていない。

そして、隣に眠ってるのは、敬愛するシンドバッド王の妹君であるナディヤ。



彼女は、母親と共にシンの故郷の村に残っていたらしいが、一代国家シンドリアが立ち上がって公務と情勢が安定した頃に姫君として迎え入れた。
母が亡くなってからずっと一人で暮らしていたらしく、迎えに来たシンと感動の再会を果たしたのはまだ記憶に新しい。


シンと似たような容姿ながら大人しい性格をしており、懸命にシンドリアに貢献しようと健気に文官の仕事やシンドバッド王の世話をしている。


本当に可愛らしい方で、夜食を持って来て公務で疲れているシンを労ったり、公務から逃げないように見張ってくれる。

……というより、一緒に一生懸命公務を行う妹の姿に罪悪感を覚えたシンが観念している形なのだが。


そのシンの妹君でありながら出来た女性であるナディヤが隣でただ眠っているだけではなく、明らかな情交の痕を残した状態で全裸で眠っているのだ。

勿論、私の自室であるため部屋には私一人しかいないし、私も一着しかない官服がベッドの下に脱ぎ捨てられていて何も纏っていなかった。

その上、武器まで外して枕元に置かれていて………もし暗殺者が来たら即座に死んでいただろうなと、また頭が現実逃避を始めた為慌てて思考を切り換えた。



「………………どうすれば良いのでしょうか………」


シンドバッド王じゃあるまいし、初めて直面する失態を前に目を閉じて小さく唸った。

朝議までまだ時間が残っているのが唯一の救いだ。






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