MAGI | ナノ
エピローグ 



「シン!貴方、また此処の文が変になっていますよ!!やり直しです!!」
「く…!苛々して集中できん!頼む、ジャーファル。一杯だけでも酒を……」
「飲酒厳禁です!」
「ナディヤー!!」
「絶対だめ」


サボり魔の王を監視しつつ、すごい勢いで書類の山を片付けていくジャーファルとナディヤ。
そんな二人を見ていたシンドバッドは、「うわ」と口元をヒクつかせてドン引く。


「どうして二人とも毎日そんなに急ぐんだ?終わらなければ、明日にやればいいだろ」
「そしたら明日の仕事が増えるでしょう?なら、今のうちにやって定時で終わらせます。それで、定時に帰ります」
「嫌に定時にこだわるな。なんでだ?」
「なんでってそりゃあ……」


ピタッとジャーファルの手が止まる。
お?と思って顔を覗こうとすると、「何でもいいでしょう!!」と赤い顔をしたジャーファルに軽くあしらわれてしまう。


「あのね、定時に帰れたらイチャイチャしようって決めてるの」
「へぇ〜?」
「ちょ、コラ!!止めてください!!仕事中ですよ!??」
「私もね、疲れたジャーファルがおっぱいに顔埋めて寝るのが可愛いから、早く終わらせたいんだ」



あのジャーファルくんが?ナディヤの胸に顔を埋める?



ザワッと周囲の文官達の空気が変わった。
カァっと顔を赤らめて俯くジャーファルに、男衆の視線が集中する。

その空気を一瞥し、不敵に笑ったナディヤは持っていた書類の束を持ち上がる。


「じゃ、私はこれを経理に渡したら終わりだから。ちょっと出てきます。
ついでに、経理にこの辺に纏めてある報告書も出してきますね」
「おう、気をつけてな」
「…ああ、お兄様。あまりジャーファルを弄らないでくださいね?」


そう念を押し、意味深な笑顔のまま去っていくナディヤ。
しんッと静かになった空気の中、シンドバッドは真剣な顔でジャーファルを見つめた。


「ジャーファルくんや」
「何でしょう?」
「お前は今、この部署の男衆を全員敵に回したぞ?」
「はい?」


こんなはずじゃなかったのにな。と小言をいう王を前に、政務官と姫君は今日も仲良く王のサポート(兼、監視)に勤めている。







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