歪みない赤司様 



「せーちゃーん!」

家が近所だったこともあり、私は征十郎と幼馴染みとして一緒に育った。

二人の関係に変化が訪れたのは中学の時で、バスケで赤司が有名になるにつれてどんどん他校の女子にもモテるようになったのだ。

そのおかげで、征十郎には彼女ができるようになり、どの子も美人で品がよくて赤司に釣り合いそうな程に頭が良さそうな感じで、幼馴染みとしては喜ばしい。


勿論私にもそこそこ彼氏が出来るようになり、相手がいるときはお互いの家を行き来しない。という暗黙のルールが出来上がった。
そして、コチラも出来る限り連絡もしない、というようにしていた。



だが、今回はそう上手くいかないらしい。



『愛里は進路はどうするんだ?』
「………うーん」



彼氏から送られてきた短い文章を眺めながらため息を漏らす。

中二の冬、ホントは夏休みにでも高校説明会に一回は行ってみるべきだったのかもしれない。

全く考えていなかった未来の事を問われ、とりあえず返信は保留して携帯をしまう。



「征十郎と一緒のところ………は、無理だし」


物心ついたの時に征十郎に『ずっと一緒のことに行こう』って言われて私立幼稚園も受験したり、そこから中学までずっと一緒だった。

さすがに高校からは無理だろう。
学力的な意味でも無理だ。


逆に私に合わせてレベルの低いところに征十郎がついてくるとなったら、あの教育熱心なお父様が許さないだろう。

ただでさえ、私と征十郎が一緒にいるのを良く思っていないのだ。


……いや、もう征十郎はそんな約束なんて忘れているのだろうな。



「……どうしよっかな……」


キセキのみんなはなんとなく行きたいところが決まっているらしく、(青峰とかはまだらしいけど)完全にキセキのみんなはバラバラになってしまう。


海常にしようかな……。
黄瀬がいるし!
あ、てっちゃんが居るから誠凛もいいな。


(………うーーん……悩む)










「…………で、わざわざ僕のところに相談しに来たというわけか」
「うん。征十郎はどっちにしたほうがいいとおもう?」
「涼太と一緒にしたところで、あまり関わることはないだろう?」
「あー、いや。高校に入ったらバスケ部のマネージャーやろうかと思って」
「……は?」


実は、今は帰宅部でマネージャーなんてやってないのだ。
帝光はバスケ部員が多すぎるし、部員にもだが勿論マネージャーに対しても凄く厳しい。
それにマネージャーの先輩が怖そうだった為、赤司に誘われたが「やだ」とあっさり断ったのだ。


「生憎私は黄瀬に興味ないから部内恋愛はないし。うん、海常にしよ。海が近いよ!!海ッ!!」
「………却下」
「えー……じゃあ、てっちゃんのとこにする」
「却下」
「それって私に高校行くなってこと?」
「僕と同じところにすればいいじゃないか」
「(色んな理由で)無理」


洛山って京都だし、学力追い付かないし、ぶっちゃけ将来を何にするか決めてないから京都まで行く理由がない。

滑るの必須じゃないか。



「やっぱ、私は誠凛でいいかな……わりと近いし」
「却下」
「……征十郎それしか言わない」
「だから、僕と同じところに」
「それは、やー」
「……………」


顔がめちゃくちゃ怖い。


「お前は僕のだろ」
「征十郎のじゃないし。……そもそも、私彼氏いるし征十郎も彼女いるじゃん」
「彼女とは別れた。……愛里の彼氏はどうすると言っているんだ?」
「彼氏は商業科の高校に行ってすぐに就職するだもん。それに、私には普通科行って女子高生満喫してこいって言われてるし」
「………どうせ低賃金だろう?」
「このお坊っちゃんめ」


とりあえず、お前をそんな男にはやれない。
腕を組んで威圧的に言ってくる征十郎は、まるで娘の嫁入りを阻む父親のようだ。
現に、今までの彼氏は全員征十郎に邪魔されて別れてきたけども。


「いつから私のお父さんになったのだよ」
「お父さんではないな。……それに、実はもう入学は決まってる」
「へー、おめでとう」
「何をいってる。愛里もだ」
「……へ……?」


『愛里も入学させるなら洛山に入る』という条件と同時に洛山高校に対して多額の寄付を行っている。

「征十郎、それ買収っていうんだよ」
「なんとでも言え。で、どうするんだ?」
「洛山はさすがに遠いよ……。彼氏も無理って言うだろうし」
「別れろ」
「えー……横暴過ぎるって。何人征十郎にビビって別れたと思うの?征十郎はスペック高すぎてそれ以上の人いないから」
「……じゃあ、」


僕と付き合えばいいじゃないか。
と当たり前のように言い放った幼馴染みを前にため息をもらした。



(……約束、忘れたなんて言わせないよ)
(覚えててくれたんだ……)



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