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「………」


ふわっとアローンの短い金色の髪が潮風に揺らされる。


船の縁に両腕を乗せ、太陽の光を反射してキラキラしている水面をぼんやりと眺めているアローン。
その周りにはいつの間にか海猫が集まり、旋回しながら彼の傍に降り立っていく。


可愛らしく鳴いた鳥へ穏やかな微笑みを向ける姿に、つい笑みが漏れた。



「なあ、あんたの連れの兄ちゃん。なんかフェロモンでも出してんのか?」
「ふふ、どうでしょう。昔からあんな感じなので」


水兵の邪魔にならないように船の隅の方に立ちながら笑ったエレナの脇に座り込んでいる水兵は、アローンから目を離すと隣の乙女を見上げた。


「それにしても、あんた等はラッキーだったなぁ。最近、海賊共が横行してて普通の船はビビッてなかなか船を出さなくなっちまってただろう?」
「ええ、港でも噂を耳にしました。それに、船が減った分、更に襲われやすくなったとか…」



今乗っている船はガレー船というオール(櫂)を使って人力で進んでいくもので、この辺りの海ではよく使われているらしい。

その為に、船を漕ぐための水兵が沢山乗船していて、エレナ達以外の乗り組み員はほぼこの商船の人員になる。


ついでに、ここの船長さんはとても気のいい人で、
「お前さんたちみたいな別嬪さんたちが乗るならこのむさ苦しい船の上も華やいで有難い。海賊に襲われても文句言わねえなら乗りな!」
とタダで乗せてくれた。



「それに彼の事、初めは女性だと勘違いしてたって……ふふっ。だから、私たちのこと『別嬪さん』って言い方されたんだって納得できました」
「いやいや、あの兄ちゃんも女みたいな綺麗な顔してるが、あんたは見たことがないくらいに……」
「?」
「……いやっ、えっと…つまりだな…!」


頬を朱に染めながら言葉を詰まらせる水兵に、首を傾げて「…あの?」と問おうとした瞬間。




「エレナ」



海猫と戯れていた彼が振り返っており、海を背にしたアローンの髪もキラキラとしていてその美しさに胸が跳ねた。


「こっちにおいで。イルカがいるよ」
「!本当ッ!?」


大人びていた表情が一気に年齢相応の愛らしい少女のモノへと変わり、パァッと好奇心に目を輝かせると水兵に軽く頭を下げてアローンの傍へと駆け寄っていく。


そのコロリと変わった表情に、更に顔を赤らめて熱に浮かされたようにエレナの後ろ姿を見つめていた水兵はその隣に居たアローンが冷たい目で睨んでいる事に気付くと青ざめてその場を立ち去った。




「ねぇ、アローンっ。イルカは何処にいるの?」
「あー。うんっと……多分潜って何処かに行っちゃったんだと思うよ」
「そう……残念ね」






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