04
レグルス (王様:マニゴルド)
「お、また俺が王様か。よし……今度は何の罰ゲームにすっか」
悪い顔をしてニヤァッと笑ったマニゴルドを見たアルバフィカは今度こそ自分の番号が見えないように完全に伏せて顔を逸らした。
今度は何を言われるのだろうか、と皆が固唾を呑んで見守る中、ふとマニゴルドはカラオケの次曲が入っていない時に画面に流れるアイドル達の新曲宣伝を目にすると「決めた」と呟いて立ち上がる。
「8番のやつは、A●B48のヘビー●ーテーションを振り付け有りで歌え」 「はぁっ!!?俺その曲知らない!」
そう言って叫んで立ち上がった後、皆のニヤニヤとした視線を受けたレグルスは我に返ってため息を漏らす。
「まあ別にフルで踊れなんて言わねーよ。どーせ、”出来ないだろうから”サビだけでもいいぜ?」
んな?と生暖かい目でマニゴルドはレグルスの肩を叩く。 しかし、その言葉を聞いたレグルスはムスッと頬を膨らませて不機嫌そうにマニゴルドを見返した。
「なんで俺にはできないって言い切るんだよ!」 「原曲知らないんだろ?だったら無理じゃねェか。まあ、あの曲有名だから動画サイトに動画上がってるだろうよ。レグルスは知らねェーみてェだけどなー」 「………………」
明らかに挑発してくれるマニゴルドに、とうとう我慢できなくなったレグルスは「じゃあやってやる!!」と言い切ってデジェルのタブレットを借りて踊り付きの動画を一度通して見る。
可愛らしいアイドルの踊りを瞬きさえもあまりせずにジッと見つめるレグルスの表情は真剣そのものであり、それを見ていた大人達は呆れ半分でそのやり取りを眺めた。
「マニゴルド、とりあえず次に回さないか?」 「いやいやちょっと待てって」
「……、ここで腕を上げて、足は……」とブツブツと言いながら軽く動いているレグルスを観察していたが、しばらくすると「おっけー!」といいながら曲を入れて部屋の奥の方にあるスペースに立ってマイクを握り締めるレグルス。
「レグルス!お前一回で振り付け覚えられたのか?」 「ああ!まあ、見てろって!」
力強くそうレグルスが宣言して曲が始まった瞬間、皆はその姿に目を奪われた。 そう、全て完璧だったのだ。
どこから出したか分からない可愛らしい声で、アイドルの研修生たちよりもキレのある動きで完璧に踊りだすレグルスに、皆が彼は性別と目指すものを間違えているのではないかと思う程に。
「……すげーな、アイツ」 「さすが俺の弟子」 「喜ぶところちげェよ」
どう足掻いてもレグルスはやっぱり天才でした。
2013.10.25 執筆 2014.04.19 収納
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