-新芽-01 快晴の空の下、干された真っ白な布が風に揺れるのをジッと眺める。 自分の手で綺麗になったモノを見ると、なんだか気持ちが良くて、真っ白な布が並んで風に揺れている光景はなんだか面白い。 「エレナ、干し終わったのなら神殿に戻ってお茶にしましょう」 「えぇ、そうね」 カゴを持って戻ろうとすると傍にいた女官が「あら!」と声をあげて突然手を取る。 「エレナ、手が凄いカサカサになってるわ!」 「今まで水仕事、そんなにしてこなかったから……でも大丈夫。すぐ慣れるから」 「ちゃんと薬塗らなきゃダメよ!エレナは女の子なのだから」 ぐいぐいと手を引かれて世話を焼かれる。 そうして貰えるのが嬉しくてつい笑うと、女官の一人が姿を現し「エレナ」と呼んだ。 「教皇様がお呼びよ。なんでも、会わせたい方が居るらしいわ」 「?はい」 (誰だろ……?あ……) 多分、残りの黄金聖闘士達が任務から戻ってきたのだろう。 それでも、黄金聖闘士には欠員が居る為、全員には会えない。 ………確か、獅子座の聖闘士だ。 (今度はどういう人達かな……) 神殿を出てまっすぐ教皇宮へ向かい、垂れ幕に手をかけようとすると「エレナ様、どうぞお入りください」と、タイミングを見張らかっていたように声がかかり、幕を引いて教皇の間へ足を踏み入れる。 「エレナ様、彼等で現在いる黄金聖闘士達最後となります」 二人の男性が膝をついて顔を伏せていた。 一人は刀身のような鋭い気配を纏う男性で、もう一人は柔和で穏やかな雰囲気の男性。 二人の様子はまったくの正反対であるのが面白い。 「……シジフォス」 「ハッ!山羊座(カプリコーン)のエルシド、射手座(サジタリアス)のシジフォス。ただ今、調査の任務より帰還致しました……」 スッとシジフォスと呼ばれた茶髪の男性が顔を上げてコチラを見上げた。 だが、視線が絡んだ瞬間エレナとシジフォスはお互いにそのまま固まってしまう。 「どうかされましたか。エレナ様」 「いえ………」 「……」 シジフォスから視線をそらして軽く自己紹介をしたのち、さっさと幕の奥に身を隠し、教皇宮から足早に去る。 「………っ」 ………シジフォスと呼ばれたあの男性は、サーシャを村から連れ出した男。 アローンとサーシャを引き離した人だった。 [*前] | [次#] 戻る |