-利用価値-01 ハーデス城に戻ったエレナ達が部屋に戻ろうと回廊を進んでいた時、突然城の中で爆発音がしてチェシャと顔を見合わせた。 「何、今の…?」 次の瞬間、ズズン、と城全体が大きく揺れ、小さく悲鳴を上げてよろけたエレナを力強い腕が抱きとめる。 恐る恐る目をあけるとそこにはキトンではなく、黒い鎧を纏った金色の髪の美しい男神が立っていた。 「!ヒュプノス」 「ペルセポネ様」 ヒッと声を上げたチェシャを見向きもせずにヒュプノスはエレナの顔などを吟味し、傷がないことを確認すると眉を寄せながら目を閉じる。 心なしかいつもの余裕が感じられない。 「どちらへ行かれていたのですか」 「……地上、まで」 「……」 安堵か呆れたのか、小さくため息をつくとやっとチェシャを振り返り、「下がれ」と低い声で命令を下し逃げるようにチェシャは姿を消してしまった。 「今、前聖戦を生き抜いた聖闘士が単身でこの居城に乗り込んで来ております」 「!」 (……ハクレイ?) セージが崩御したのなら、間違いなくハクレイだ。 ……たった一人で来るなんて、あの人らしい。 微かに笑みを漏らしたのを見逃さなかったヒュプノスはエレナの手を掴んで瞳を自分へ向けさせた。 「貴女を新しい居城へお連れします」 「……ハーデスが戻らぬのに、この場を離れるわけにはいきません。離れるのなら、彼も共に」 「ご安心ください、またすぐ会わせて差し上げますよ」 「………」 有無を言わせぬような視線に、エレナはギュッと衣の裾を握り締めた。 (まだ、手はある筈…) 必ず、彼を助けなければ。 そう心の中で誓い、ヒュプノスの手を取ろうとした時、「そうはさせるかよ!!」という元気な声が耳をついた。 ハッとして振り返ると、テラスに繋がる方の入口に汗まみれの耶人とシルバーのクロスを纏った女の子が立っていた。 [*前] | [次#] 戻る |