囚われる02 

「バカな……、我が力をも超えて。さらに……影の技まで見破るか獅子座(レオ)よ――ッ!!」


ヒマラヤ・ジャミール。
聖闘士たちが巨大帆船を発見して修復していた処に、船を破壊しようと乱入してきたアイアコスの臣下であるスペクター・バイオレートとやむを得ず戦闘状態に陥った獅子座レグルスは始めの時はそのパワーと影の技にピンチに追い込まれた。


しかし、レグルスはその影の技を破るどころかバイオレートへその技を逆にかけてしまったのだ。


まるで地獄に一本垂らされたクモの糸にしがみつくようにスペクター・バイオレートに亡者達がしがみついてその動きを止めてしまう。




「ああ!はっきり見えた!!」




(一度、アレを見たからな)


エレナの胸から湧いてきていた闇色のハーデスの小宇宙。
それと似ている闇色の小宇宙を持っている冥闘士の小宇宙が足から地面へと広がっていくのが"視えた"のだ。


「お前、どうやって……!!」
「ただ、目を凝らすのさ」


相手の癖も隙も力の流れも、この影だってそうさ。
仕組みさえ見えれば、お前より強い小宇宙で亡者どもを操ればいいだけだろ。


バイオレートよりも巨大な黒い影がレグルスの足元から広がり、
バイオレートの方へとその手を伸ばしていく。



「だからもうとっくに、お前のことは超えてるんだ」


顔を出した月を背にしたレグルスの表情は酷く大人びていた。

先程まで戦闘を楽しんでいるような様子だった無邪気な子供ではなく、戦士としての顔をしている獅子座の聖闘士レグルスを見上げたバイオレートは乾いた笑みを漏らして最後の抵抗を図った。


「私は、お前にだけは絶対に負けるわけにはいかん!!地ベタを這う私たちを導くあの方の為に!!最初から才も光もあるお前には、理解できんだろうがな」
「………」

「もはや、お前に対する策はない!この体一つでぶつかるのみよ!!!」


女性とは思えない程力強い小宇宙が辺りに満ち、その拳が異形を成してレグルスへと真っ直ぐ向かっていく。


「ベヒーモス…」


目を細め、その必死な様を見つめたレグルスは拳を握った。


「いつもそうだ。俺はいつも人の気持ちが分からない。
戦い方以外よく分からない。だけど、俺は……」



“戦いでしか、進めないんだ!!!"


レグルスから放たれたライトニングプラズマはバイオレートを完全に圧倒し、「アイアコス様…ッ」と最後に呟いて地に膝をついて絶命するのを見届ける。

死しても握り締められたままの拳に「ホント、強い拳だったよ」と声をかけた。



「あんたも、何かを守っていたのか……?」


片膝をついてバイオレートの顔を覗き込むも、もうバイオレートが答えてくれることはない。

「俺も……行かなくちゃ……」

巨大帆船を守っている耶人達を守らなくちゃ。


「!?」

ハッと目を開くと空から衝撃が降ってきて目を見開いた。





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