構ってちゃん
「ね〜ぇ!ゲームばっかりしてないで構ってよー!」
「うぜえ、今良い所なんだから邪魔すんな」
絨毯に胡坐をかいてベッドに背を預けているジュダルの手元は、最近新しく買ったらしいゲーム機が握られている。
先週まで違うゲームに熱中していたのに、昨日になって「飽きた」と言っていたからまた別のゲームを買って貰ったらしい。
ジュダルの養母はどうも彼を甘やかす傾向があるらしく、彼が「欲しい」と言ったものはどんどん与えていた。
「うお」とか「やべぇ」とか言っているジュダルの脇から、敵の兵士をバッタバタ魔法で倒していくのを眺めるも数分で見飽きてムゥっとしながらベッドに大の字に横になった。
女の子なのに足を広げてだらしないとか、どうでもいい。
申し訳程度にスパッツはしっかり履いてるし。
しばらくジュダルの立派な三つ編みに指を指し込んでみたり、適当に遊んでいたがすぐに飽きて「もぉおお!」と雄たけびを上げた。
「牛のモノマネか?」とか失礼な声が聞こえた気がするが、無視だ無視!
「ゲームばっかりしないでよ!久々に可愛い彼女が来たんだから構ってくれたっていいじゃんっ!」
「あ?何処に誰がいるって?」
「〜〜っもう馬鹿!」
ケラケラと笑っているジュダルの後頭部を、枕でばふばふっと叩くとうざったそうに枕を投げられてしまった。
ちらっと見たゲーム機では、ボス戦の手前くらいの局面になっており「はあ…」とため息をついてうつ伏せになってシーツに顔を埋める。
せっかく、部活を引退してゆっくりできるかとおもったのに、肝心のジュダルはいつも通りゲームに熱中。
付き合って一年以上経ってお互いに慣れていると言えど、来年度から始まる大学生活ではキャンパスが同じと言えど違う学部でなかなか会えなくなるのに…。
まあ、いつも通りと言えばいつも通りなんだけどね…。
呆れたように小さく溜息を吐いてこのまま寝てしまおうと目を閉じる。
だが、しばらくするとごそっとスカートの中に何かが潜り込んでくる感触がして慌てて飛び退く。
やはりというか当然ながらそれはジュダルの片手であり、反射的に真っ赤になった顔でじっと相手を睨む。
「馬鹿馬鹿っ!なにして」
「お前が構えっつたんだじゃねぇか」
「言ったけど!言ってないもん」
「へぇー?じゃあ、俺はこのまま続きやっていいんだな?」
再びゲーム機に視線を落としてボス戦に突入し始めたジュダルを見つめると、イライラが湧き上がってきて勢いで目の前の三つ編みを掴む。
「いでっ!てめっ、何すんだよ!」
「ゲームばっかしないでよ!寂しい……っ」
「……けっ、めんどくせ」
ゲームを一時停止させると、振り返ってまともに此方を見たジュダルがポンッと頭に手を置く。
そして、頭を撫でながらぐしゃぐしゃーっと折角綺麗にした髪の毛を乱していく行為に抗議してジュダルの髪もぐしゃーっと乱した。
三つ編みを乱したら怒られるから、前髪だけ。
そうやってじゃれていると、えへへと笑いながらついついニヤニヤしてしまう。
「ジュダル優しい、好き〜」
「あ?」
「いつもツンツンして最後の最後には結局優しいもんね」
「は、ウソだろ」
「これでもっと構ってくれたら最高なのになぁ」
「構ってよ〜」と言いながらジュダルの膝の上をごろごろするもおざなりに扱われ、拗ねると軽く構われては放置を繰り返す。
「なあ、いい加減ゲームの続きやりてぇんだけど」
「……分かった、もういいもん」
「ジュダルのばか、戦闘ゲーム狂い」とぼやきながらもベタベタしてくる恋人を一瞥したジュダルは、堪え切れずにニヤッと笑った。
(……そんなのわざとに決まってんだろ)
もっと俺に構え、ばーか
20150131
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